オークランド大学の新施設ファレのお披露目に感銘を受ける

 日曜日のテレビでは、朝8時からのチャンネル1の「タガタ パシフィカ」(Tagata Pasifika)と、続けて、8時30分からの「アジア ダウンアンダー」(Asia Down Under)が、断然面白く、欠かさず私は見ることにしている。「タガタ パシフィカ」とは「南太平洋の人々」という意味だ。ニュージーランドの6つの南太平洋系コミュニティのためにイギリス語で放送されている。
 今日の「タガタ パシフィカ」では、なんといってもオークランド大学の「ファレパシフィカ総合施設」(Fale Pasifika Complex)のオープニングセレモニー報道を興味深く見た。12メートル以上のファレと呼ばれる建造物は、南半球ではサモア大学のファレに次いで大きいものだという。

http://tvnz.co.nz/view/tvone_story_skin/411811%3fformat=html

 この「ファレパシフィカ総合施設」とは、トンガ、サモア、フィージーなどと関連が深いニュージーランドオークランド大学構内にできた南太平洋研究のための新施設で、6 million dollarsとテレビで言っていたから、約4億2千万円もかけた一大プロジェクトだ。この費用は、オークランド大学と政府が共同出資したという。
 この新施設のお披露目のニュースだったのだが、構想は1988年頃からあったらしいが、途中少しブランクがあり、ここ10年で急ピッチにすすみ完成にこぎつけたという。
 日本なら地鎮祭や棟上式という感じだろうか、「基礎になる石」(foundation stone)を、まだ整地が済んでいない地面に、ヘレン=クラーク首相が置いている数年前の姿もテレビに映し出された。もちろんヘレン=クラーク首相は、今回の完成を祝うセレモニーにも出席して、南太平洋文化に対して敬意を評するスピーチを述べた。たしか彼女自身オークランド大学出身ではなかったか。

 このニュースを伝えるオークランド大学のサイトはこちら。

http://www.auckland.ac.nz/cir_newsevents/index.cfm?action=display_news&news_id=4282

 同じくオークランド大学のサイトだが、ファレと呼ばれる建造物はこちらで見ることができる。

http://www.arts.auckland.ac.nz/departments/index.cfm?S=D_PACIFIC

 さしずめ、これが日本なら北海道大学東京大学アイヌ学部に、伝統と新しさを重んじる最新式の素晴らしい施設ができて、共同で出資した代表たる首相が、お祝いの挨拶をしに行くようなものだ。
 南太平洋は共通性があるのかどうか、不勉強でわからないので、おそらくマオリ文化だと思うのだけれど、例の歓迎を意味するハエレマイと歌いながら、ゲストを新しい建物(te whare)に招き入れていた*1
 お祝いだから、踊りや歌ももちろん登場する。テレビに映し出される南太平洋系の学生たちはとても嬉しそうで、見ていて、こちらまですがすがしい気持ちになる。
 参加者も言っていたけれど、伝統を重んじながらもモダンで、コンピューター施設なども導入されるというから、この建物自体も素晴らしいけれども、それ以上にこの建物の背後にある考え方自体が素晴らしいと言っていた。
 伝統的芸能を披露するために参加した南太平洋系の女性は、「自分は年齢的にここで勉強するのはすでに遅いけれど、子どもや孫がね、こういう素晴らしい施設で勉強できるかと思うと嬉しい」と、誇らしげに言っていたが、私はこのコトバを聞いて涙が出そうになった。

*1:マオリは、ポリネシア文化圏に属し、当然、トンガ、サモアクック諸島、ハワイ、イースター島など、文化的・言語的に共通性をもっている。