ニュージーランドという呼称のもつ意味 (3)

 冒頭でも触れたように、ニュージーランドとは、オランダが植民してつけたノヴァ・ゼランド(「海の土地」という意)という名称を、その後、オランダに代わって支配したイギリスが、イギリス語風に発音し直して名づけた名称に他ならない。
 キャプテン・クックが来る前から、アオテアロアアオテアロアだったというのがマオリの基本的な主張であり、私たちも事実としてこれを否定することはできない。なんとしても、ニュージーランドになる前のアオテアロアでは、マオリが先住民だったのである。
 アオテアロアニュージーランドの建国の日ともいうべきワイタンギ・デーが、アオテアロアニュージーランドにとって歴史的に重要な日であることは言うまでもない。ワイタンギ条約は、三条から成る簡単なものだが、イギリス語版とマオリ語版との違い、条約と現実との隔たり、その解釈をめぐっては論争が絶えなかった。マオリからすれば、当初ワイタンギ条約は、確認をした覚えもないイギリス側の略奪と裏切りの象徴であったが、自分たちの悲惨な現実を、せめてワイタンギ条約が約束する状態に戻す政治的根拠であり武器にしようと把握し直すようになった。
 短期間だが、一度だけ名称変更した二ュージーランド・デーに反対し、ワイタンギ・デーという名称にマオリが今日なお固執するのには、そうした意味がある。ニュージーランドを、ニュージーランドではなく、アオテアロアニュージーランドと呼ぶべきという論拠もここにある。