昨日紹介したデビッド=バーン(David Byrne)の「グロウン・バックワーズ」(Grown Backwards)の中の二曲目に、「ビールを愛した男」(The Man Who Loved Beer)という唄がある。
この歌詞の中の「二月から十二月まで、悲劇的な年だった」(“February through December we have such a tragic year”)という二行が印象的な唄なのだが、アメリカ合州国の孤立を歌っているような歌で、いま風刺漫画で問題になっているデンマークやヨーロッパの孤立、はたまた日本の孤立を歌っているような気がしないでもない。
デビッド=バーンの「ビールを愛した男」は次のように始まる。
(拙訳)
今日は誰と話ができるかな
兄弟たちは、平等なはずだ
だけど、今の昔っからの友達は
まったく愛せない存在になっちゃったTo whom can I speak today
The brothers they are equal
But the old friends today
They have become unlovable(拙訳)
さて今日は誰と話ができるかな
優しさは、すでに消滅してしまった
そして、あの暴力的な男がみんなに襲いかかるようになってしまったTo whom can I speak today
The gentleness has perished
And the violent man has come down on everyone(拙訳)
今日は誰と話ができるかな
地球を歩き回る悪
それに終わりがあるはずもない
止めようとしても止められないだけだTo whom can I speak today
The wrong which roams the earth
There can be no end to it
It is just unstoppable
「アメリカ合州国が象徴する「帝国」(Empire)。9.11後の暴力と混沌の現代社会が、このアルバムに影を落としていることは間違いない。そうした現代に生きる葛藤がここにはある」と、昨日書いたのだが、デビッド=バーンの「グロウンバックワーズ(Grown Backwards)」は、時代と切り結んだ9.11以降の作品と言えるだろう。