アルバムNothing’s in Vainから軽快なC'est L'amour。名曲Li Ma Weesu(私の過去)。
ダンサーのムッサ・ソンコ(Moussa Sonko)もステージに乱入して盛り上げる。
若者への期待をテーマにした、なんといっても素晴らしいMy Hope Is In You。
アルバムSetからのタイトル曲Set。アルバムJokoからBrima。アルバムGuide (Wommat)から7 Seconds。
アフリカというと、エイズ、貧困ばかりが言われる。たしかにアフリカは多くの困難に直面しているけれど、実際のアフリカはそればかりじゃないんだと紹介してから歌い上げた、スティーブン・ビーコ(Steve Biko)も歌詞に出てくる感動的なNew Africa*1。この曲で、小休止。
ユッスー・ンドゥールは世襲の音楽家、語り部と言われるグリオ出身である。
政治的発言を売りにしている歌手ではないけれど、これくらいは言えないのか、これくらいは行動できないのかという期待を実行してくれる数少ない歌手である。
今回も何といってもアサン・チャム(Assane Thiam)のタマ(トーキング・ドラム)をはじめとする4人のパーカッションが凄かった。
ただ、どうしたわけか、今回のユッスー・ンドゥールのボーカルは、低い声も高い声も出ていなかった。その点だけが唯一残念だったが、それでも私はユッスー・ンドゥールに久しぶりに再会できて嬉しかった。
初日よりも二日目の方がユッスー・ンドゥールもバンドもずっと良かった。おそらく初日は客の反応や勝手がよくわからなかったという点と、二日目の方が客の反応が良かったからだろう。ダンサーに対する反応も格段に違っていた。
このバンドの中では自分以上に本物のグリオとユッスー・ンドゥールが紹介していたボーカリストの音頭で、日本とセネガルの交流を楽しんでいるときも、会場は、ユッスー・ンドゥールとスーパー・エトワール・ドゥ・ダカールと一緒に時を過ごせる幸福感を素直に示していたから、ユッスー・ンドゥールも喜んだと思う。
そうしたせいか、最後のアンコールでは、初日にやらなかった曲をやった。
アルバムLionから、Bamakoと、アルバムSetから、Toxiquesだ。
アンコールの伴奏はシンセサイザーくらいで、バンド総勢で合わせたものではないから、最初から組まれたアンコール曲ではなかったのかもしれない。
「金持ちの国は有毒化学廃棄物をつくっている どうしてそれを私のところに送りつけるのか 貧しい国は有毒化学廃棄物を知っている どうしてそれを受け入れないといけないのか」「第三世界の多くの国々はNoと言い始めている」と歌われるToxiquesは、Setの中の南北問題を扱った名曲だ。
ちょうど私がパソコン通信に熱中していた頃で、交流していたアメリカ人に、こうしたユッスー・ンドゥールの唄の存在を紹介したこともあったし、LionやSetは当時の私の愛聴盤だったから実に懐かしい。
プログラムに「歌うジャーナリスト」との紹介があったけれど、そもそも大衆に根ざした歌手というものはそうした姿勢を持っているのが普通というものだろう。日本にも、こうした普通の姿勢をもった表現者がもっと増えてもらいたいものだ。