Ray Charles の "You Don’t Know Me"(1956)(1962)

Modern Sounds in Country and Western

 1962年にヒットしたRay Charlesの"You Don’t Know Me*1"という唄は、ある女性に対する初心(うぶ)な男の一方的な片思いのような歌詞に聞こえる。
http://www.jazzblueslyrics.com/lyrics/ray-charles/you-dont-know-me-68.html
 "You Don’t Know Me"が収められている"Modern Sounds in Country and Western Music"というアルバムは、私は所有も愛聴もしたこともないが、カントリーミュージックのアルバムで、"You Don’t Know Me"がヒットする数年前、29歳のレイ・チャールズは、自家用飛行機も買うほどの大成功を収めたから、R&Bのレイ・チャールズがカントリーアンドウェスタンを歌うなんて馬鹿げていると非難されたそうだ。
 "You Don’t Know Me"は、女性のことを歌っているようだが、この時期は公民権運動が盛んになってきた時期とも重なり、この唄はそうした文脈で取ることが可能な唄だと、先日観たケーブルテレビのレイ・チャールズ特集でビリー・ジョエルが言っていた。
 つまり、黒人が受けた差別や屈辱、苦難を歌っているようにも聞こえるということなのだろう。あんたはわかっているつもりかもしれないけれど、「俺のことなんか、お前は何にもわかっちゃいない」んだと。商業的に大成功したレイ・チャールズだったけれども、アメリカ合州国での黒人という位置は変わらなかったのだ。
 同じ特集番組で、カントリー歌手のウィリー・ネルソンがライブでの曲と曲の間に、負けず嫌いのレイ・チャールズと昨晩チェスをやったんだと話を切り出して、次のように続けた。
 「彼が勝ったんだ。だけど、今度やるときは明かりをつけてやろうよね」(Well, he won…..but uh, the next time we gonna turn the lights on.)と。レイ・チャールズと観客が大笑いしたことは言うまでもない。
 またジョニー・カーソンショーで、レイ・チャールズは、眼が見えるか見えないかなんてどうってことはない、人間にとっては意志というものが大事で、人間はすごい力を持っているんだと強調し、五体満足でも可愛そうな奴(pretty pathetic)もいるんだからと、ジョニー・カーソンを笑わせていた。
 そのレイ・チャールズも自動車を運転して、高級車をおしゃかにしてしまったという。そしてその話を警察官は信じなかったという。これまた、にんまりしてしまう話だ。

*1:"You Don't Know Me"のオリジナルは、Edy Arnold/Cindy Walkerによる50年代の曲。