久しぶりに黒澤明の「椿三十郎」を観た

椿三十郎

 私が黒澤明監督の映画を観るようになったのは、アメリカ合州国はサンフランシスコのストランドという映画館で初めて「椿三十郎 [DVD]」を観てからのことだ。これは、もう27年くらいも前の話になる。それ以来、七人の侍 [DVD]用心棒 [DVD]」「羅生門」「生きる [DVD]」「隠し砦の三悪人 [DVD]」など、一連の黒澤監督作品を観てきた。
 黒澤明監督の映画には、ストーリー展開の面白さがあり、ときに大活劇があり、また深い洞察力で人間の心理が描かれている。これを完全主義者と言われる黒澤明監督の絵コンテをもとに、映像美として具体化される。これでは黒澤監督のつくる映画が面白くないわけがない。事実、ハリウッドの監督たちも、黒澤映画に魅せられ、Kurosawaに対して敬意を表しているのである。
 この「椿三十郎 [DVD]」は、「用心棒 [DVD]」の続編的作品として作られた。
 黒澤映画の侍映画はやたら面白いが、「椿三十郎 [DVD]」も例外ではない。
 三船敏郎が演じる椿三十郎は、めっぽう強いし、頭のいい戦略家である。正義感もあるのが、真面目ぶった堅物ではない。照れ屋でもあり、真面目な奉公は大の苦手だ。
 この剣豪・椿三十郎と、加山雄三田中邦衛が演じる若侍たちとのやりとりがやたらと面白い。これは、いわば、高段者と、級外者の面白さなのだ。
 だから、最後の、高段者どうしの室戸半兵衛役の仲代達矢との決闘シーンの迫力には度肝を抜かれる。その高段者・椿三十郎も、睦田夫人には弱いところが、またおかしい。人格という点で、凄腕の剣豪でも、睦田夫人や、伊藤雄之助扮する城代家老睦田にはかなわないということは人生あるものだ。
 音楽のテンポもいい。
 黒澤映画の面白さを体験していない若い方には、是非観てもらいたい。