冒頭のシーンで、太平役の千秋実と又七役の藤原釜足の二人の百姓が、言い合いをしながら歩いていくところに、痛手を負った一人の武士が、馬に乗った数名の武将たちに止めを刺される場面がある。このときの構図が、とても面白い。これはマンガのコマ割りだ。この場面は必見。
労働力として囚われの身になった百姓たちが、お城の石階段から大集団で降りてくるところを、下から鉄砲隊が迎え撃つ場面も迫力がある。
太平と又七のかけ合いは、人間の欲が出ていてすこぶる面白い。そして真壁六郎太(三船敏郎)。この3人のキャラクターが際立っているので三人だけで話を引っ張っていける。
脚本は、菊島隆三・小国英雄・橋本忍・黒澤明が担当の共同制作。こうした制作環境が映画を数十倍も面白くしていることは想像に難くない。例えばそれは関所の抜けかたのアイデアに現れている。
黒澤明の侍映画で面白いのは、なんといっても大活劇。ひとつは乗馬の場面である。このシーンは迫力がある。「駅馬車」のジョン・フォード監督との交流で、どちらがどちらに教えたのか忘れたが、スピード感ある疾走する馬の撮り方を話し合ったことをどこかで読んだ覚えがある*1。そして槍と槍との大活劇。
「隠し砦の三悪人」(1958)は面白い。
あのジョージ・ルーカスが、「隠し砦の三悪人 [DVD]」から、映画「スターウォーズ」のヒントを得たという話は有名だ。そしてこれはうなずける話だ。