新藤兼人監督の「裸の島」を観た

裸の島

 学生時代に、映画好きの、ある先輩から、新藤兼人監督の「裸の島 [DVD]」の話を聞いたことがある。その話から自然との闘いとしての労働や生活を基本に撮った映画であることが理解できた私は機会があれば観たいと思っていたのだが、その「裸の島」を先日ようやく観ることができた。
 台詞を排除した映像はチャップリン無声映画のようであり、映像と、林光氏の音楽との共同作品ともいうべきものだ。プロの俳優は乙羽信子殿山泰司の二人で、あとは島の人たちを出演させている。
 資金に恵まれない中で、限りなく少人数のスタッフで製作された1960年の作品であり、その意味で、この映画づくりそのものが、新藤監督にとっての、労働であり、闘いであったろう。全編、乾いてやせた島の大地に水をやるシーンで満たされているのだが、映画技術なら、普通はカットすべきプロセスを、延々と、そして淡々と、見せる。
 白黒の美しい海辺の情景は、アオテアロアニュージーランドのコロマンデルを私に思い出させてくれた*1。美しい自然は、同時に過酷な自然でもあり、その自然に対して格闘する人間の姿を映像が表現している。
 最後に、島全体の情景を空撮している演出も素晴らしい。
 DVDは、特典として、新藤兼人氏と林光氏の映画を観ながらの対談音声も入っている。一度本編を見終えてから、両氏の開設を聞きながら再度観た方がいいだろう。

*1:実際、「裸の島」は、アオテアロアニュージーランドのコロマンデルやエイブルタズマン、そしてアイルランドを私に思い出させてくれた。