守屋前防衛次官の証人喚問が行われたが、疑惑は深まるばかり

 今日午後から、守屋前防衛次官の証人喚問がおこなわれた。
 自衛隊員倫理規定があるにもかかわらず、また指導監督する立場のトップに数年間いたにもかかわらず、自らその倫理規定を破っていたというお粗末さであるが、問題はそれにとどまらない。
 まずは接待問題だが、12年前にゴルフを始めたその1年後から、山田洋行の元専務から、11年間で200回以上のゴルフ接待があったことを認めた。その際、佐浦丈政他の偽名を使っていたこと。その他、ゴルフ旅行、2回ゴルフセットをもらったこと、飲食の接待、酒宴の席、賭けマージャン、守屋氏のパートナーへの接待など、利益誘導が可能な立場にありながら、華族ぐるみでけじめのない関係を続けていた*1
 問題の核心は、便宜をはかることがあったかどうかであるが、これに関しては明確に否定したものの、疑惑は深まるばかりだ。
 政府与党の追及は甘く、すでに幕引きをはかろうとしているようだが、とんでもない。野党の追及も始まったばかりだが、テレビ中継を見ていて生ぬるさを感じた。
 山田洋行とは5年間の受注額が174億もあり、その大半、9割以上が、競争入札ではなく、随意契約であるという。次期輸送機のCXエンジンに随意契約の鶴の一声があったのではないかという疑惑があり、守屋氏は今日明確に否定したものの、疑惑が晴れたとは言いがたい。
 給油問題では日本がイラク戦争作戦に参加していたのではないかとの問題があり、実際は80万ガロンであったのに対し20万ガロンと言い張っていたのは、組織的な隠蔽工作があったのではないかという疑惑が起こっている。この問題でも明確に否定したものの、どういう経緯からのことなのかも明確になっていない。
 山田洋行という軍事産業の業者と守屋前防衛次官が、複数の大臣経験者や防衛庁長官とともに同席した会合もあったと証言していることは極めて重大である。日米関係もはさんで、今回の問題は、ロッキード疑獄事件のような規模に発展する可能性もある。
 国益、安全確保、防衛、治安、さらに国際社会への参加や国際貢献だのという美名のもとで、テロ対策特措法などの防衛問題が論じられやすいが、こんなお粗末な防衛次官が国民の血税を使って受注を左右しているのだとしたら、それは国防でもなんでもない。事実、山田洋行の水増し請求に対し、守屋氏が山田洋行の処分問題を無しにしたという疑惑も浮上している。
 国民がこれ以上騙されないためにも、この問題は徹底的に追及されなければならない。

守屋前防衛次官:崩れた強気発言 「甘く見るな」8月から一転 証人喚問、冒頭に陳謝
 ◇次々と癒着発覚

 「次官を甘く見るな」。2カ月半前、記者を怒鳴りつけて疑惑を否定した「大物次官」が29日午後、衆院特別委の証人喚問に臨んだ。防衛省守屋武昌事務次官(63)を巡っては、数百回ものゴルフ、マージャン、焼き肉と常識を超えた業者との癒着が明らかになり、これまでの虚偽説明が鮮明になった。省昇格や米軍再編など省の宿願を次々と成就させる一方で、利権に取り込まれたのか。疑惑表面化から10日、証言に注目が集まった。

 ◇証人喚問、冒頭に陳謝

 午後1時から始まった証人喚問。守屋前事務次官は冒頭、「国民のみなさまと、防衛省の職員に申し訳なく思っております」と陳謝した。深谷隆司委員長の質問に、住所、生年月日を淡々と答える前次官には、8月に記者に対して重ねた強気の姿勢は影を潜めていた。

  ◆  ◆

 「甘く見るな。何を聞きたいんだ。広報を通せ」。8月5日夜、防衛専門商社「山田洋行」元専務(69)との関係をただそうと自宅前で待っていた毎日新聞の記者に、現職だった前次官は怒声を上げた。「(ゴルフは)古い話だ。君らの言うようなことがあれば、おれはいつでも辞めてやる」とまで言い放ったが、同省の調査には一転して、4月までゴルフを続けていたことを認めた。

 8月末に退任するまで、次官在任期間は4年1カ月に及び、その間、人事を完全に掌握して地位を強固にした。担当課が作成した人事案を受け取ると、数日後「これでやれ。理屈ではなく、言う通りやれ」と投げ返した。ある幹部の目には「意に沿う部下を要職につけ他は外した」と映った。退任直前に起きた小池百合子防衛相(当時)との確執も、後任の次官人事が原因だった。

 一方で、行政手腕を評価する声もある。「防衛庁を政策官庁に脱皮させ、省に昇格させたのは彼の力。政策を発信し永田町を説得できた」と元同省幹部。省昇格や米軍普天間飛行場沖縄県)移設の日米合意、イラクへの自衛隊派遣。小泉純一郎元首相の飯島勲首相秘書官(当時)ともパイプがあり、防衛族自民党議員は「政治家も驚く政治センス」と言う。

 大物ゆえに一般業者との距離は遠かった。「うちのレベルで会える人間じゃない。遠目で顔を見るだけ」と中小商社幹部。大手商社幹部も「あいさつはしたが、業者は相手にしないという印象だった」と振り返る。

 しかし、元専務は特別だった。元専務は取材に「20年来の付き合い。人前では敬意を示すが(公式行事が)終わればただの友達」と答えた。しかし、前次官は次期輸送機(CX)のエンジン調達について、元専務が設立した「日本ミライズ」との契約を部下に迫ったことが発覚。ライバルの商社幹部は「友達の域を超えている」と批判した。

毎日新聞 2007年10月29日 東京夕刊


 次は、asahi.comから。

ゴルフ接待200回超 守屋氏喚問「宴席に政治家同席」
2007年10月29日15時30分


 防衛省守屋武昌・前事務次官(63)が軍需専門商社「山田洋行」の元専務からゴルフや飲食など多額の接待を受けていた問題を受け、衆院テロ対策特別委員会で29日午後、守屋氏の証人喚問が始まった。守屋氏はゴルフ接待は12年前から始まり、「200回を超えている」と述べ、「利害関係者とゴルフをするのは不適切な行為だった」と自衛隊員倫理規程に違反していたことを認めた。最大の焦点である接待の見返りに装備調達に便宜を図ったかどうかについては「一切ございません」と否定。宴席で政治家が同席したことがあったかどうかを問われると、「あったと思う」と答えたが、政治家の名前は明らかにしなかった。



証人喚問で質問に答える守屋武昌・前防衛事務次官=29日午後1時9分、国会内で

 証人喚問は約2時間半にわたって行われた。深谷隆司委員長(自民)の冒頭質問の後、田中和徳(同)、富田茂之(公明)、川内博史(民主)、松野頼久(同)、赤嶺政賢(共産)、照屋寛徳(社民)の6氏が質問した。テレビ中継は動画で放映された。

 守屋氏はゴルフ接待について「ゴルフは土日に行くことが多かった。トータルすると年20〜30回、5年間で100回を超えていたのではないか」と述べた。守屋氏は防衛政策課長だった12年前に元専務から初めてゴルフ接待を受けたといい、これまでに合計で200回を超えていることを明らかにした。偽名を使ってプレーしていたことも認めた。

 そのうえで「防衛省自衛隊のトップにあったものとして、倫理規程違反を続けてきたのは申し開きのない事実で申し訳ない。不適切で配慮に欠いた行為だと思っている」と語り、退職金の返納については「熟慮して自分なりに対応を決める」と前向きな姿勢を示した。

 守屋氏は、元専務と賭けマージャンを行ったことや、2回にわたってゴルフクラブのセットを譲り受け、北海道や九州へのゴルフ旅行の代金も支払ってもらったことも認めた。その際、防衛省の職員が参加したこともあったという。

 元専務と知り合った経緯については、第三者を介して米国防総省などと人脈があると紹介されたといい、「国防総省OBらと話すことができ、米側の考えなど(を知るための)貴重な情報源として付き合い始めた」と述べた。

 これまでの防衛省の聞き取り調査などに守屋氏は、元専務から100回以上、ゴルフ接待を受け、支払ったプレー代は妻同伴の場合を含め実費より少ない1回1万円だったことを認めている。マージャンをしたり、焼き肉店で会食したりすることもあったという。

 野党側は、業者と「家族ぐるみ」の癒着を深めた守屋氏が、防衛装備品調達に絡んで元専務らに便宜を供与していたかもただす。山田洋行が02〜06年度に防衛省から受注した実績は総額約174億円(中央調達分)で、9割超が競争入札によらない随意契約だった。

 朝日新聞社の取材によると、航空自衛隊の次期輸送機CXエンジン(約6億円)の調達をめぐって守屋氏は、元専務が設立した軍需専門商社「日本ミライズ」と「随意契約すればいいじゃないか」と部下に促していたことが判明しているが、守屋氏は「そういう発言はいたしておりません」と否定した。

 守屋氏は8月30日の退任会見で、調達で便宜を図ったかどうかについて「職務上そういう権限は持っていない。職務をゆがめるとか、権限を行使するということは一切ない」と否定している。

 野党側は03年2月のインド洋での海上自衛隊補給艦からの給油量の誤りを海上幕僚監部が隠蔽(いんぺい)した問題でも、守屋氏の関与を取り上げる。

 実際の給油量は「80万ガロン」だったにもかかわらず、海上幕僚監部内で「20万ガロン」と誤入力した数字を根拠に、福田首相(当時官房長官)や石破防衛相(同防衛庁長官)は燃料のイラク作戦転用を否定。しかし、実際には福田氏の答弁前に海上幕僚監部内でミスを認識しながら隠蔽。防衛省の内局(背広組)も正しい給油量を記載した資料を受領していた。

 同省が29日に示した中間報告では、組織的な隠蔽を否定し、防衛局長(守屋氏)は「認識していなかった」としているが、野党側は「隠蔽工作が(防衛)省庁ぐるみで行われた可能性がある」(民主党鳩山由紀夫幹事長)として、守屋氏を追及する見通し。

*1:JNN調査で、富士通の子会社でも、も、偽名を使ったゴルフ接待があったと報じている。守屋氏は、「神楽坂」というコードネームで最上級の接待待遇だったという。