呆れてモノが言えない

amamu2008-07-11

 大人がこれでは、子どもに何も言えない。
 最近は、忙しくて、ブログを更新している暇もないくらいだ。それほど真面目に仕事に追われているということなのだが、しかし、今回の大分県の教員採用試験にまつわる汚職事件はひどすぎる。
 これまで、このブログで、自分の採用試験に関わる体験記を書いてみようなどと思ったことは一度もないけれど、少し、自分の体験を書いてみる。
 もう30年も近い昔の話になるけれど、私は、ある都道府県の公立の中学校の教員採用試験を受験したことがある。一次試験は、奇跡的に受かり、二次試験に進むことができた。二次試験は、小論文と集団面接。一次試験の筆記試験よりも、小論文と面接の二次試験の方に自信のあった当時の私は、自分なりに満足のいく二次試験であったが、結果は不合格だった。
 その後、いくつか私立大学の附属高校を受験し、そのうちのひとつは、一次試験は二つの試験があって、ひとつは「何故高校の英語の教師になりたいのか」について英語で書く作文試験で、罫線も何も引いていない一枚のザラ紙が解答用紙だった。もうひとつの筆記試験は、「なぜ高校の教師になりたいのか」について、日本語で書く同じく作文試験だった。こちらも、罫線も何も引いていないザラ紙の解答用紙が渡されただけだった。これらの一次試験に合格したものだけが二次試験に進むことができたのだが、二次試験は、面接試験で、面接官は7名もいた。若気の至りで、随分と暇な学校だと思った。二次試験に合格したものだけが三次試験に進むことができ、第三次試験は、校長面接だった。
 私の場合、公立にしろ、私立にしろ、いわゆるコネクションのようなものは何もなかった。
 その後、現場の教壇に立つようになってから今度は、教員採用の仕事などにも関わるようにもなったけれど、見る尺度としては、教員としての資質・適格性・将来の可能性であり、私の職場は集団討議で判断をするから、もちろん、採用にあたっての金品の授受などは、金輪際ありえない。そもそも、こんな当たり前のことを強調する方がおかしい。
 その意味で、今回の大分県の話は、なんとも呆れてモノが言えない。私にはそう言える資格があるという確信があるから、そう書くけれど、こんな呆れてモノが言えない話は氷山の一角なのだろうか。徹底究明が必要だ。何故なら、ことは教育のレゾンデトール(存在理由)が問われているからだ。こんな不正の結果、教壇に立ったとして、どうして子供たちに、不正はいけないと説くことができるだろうか。
 もうひとつ、今回の報道で私が気になることは、実は直接的には全く関係のない教員免許法のことである。
 新しい免許法と同時に従来の、現在教員である私たち現役の教員にも、10年ごとに免許を更新しなければならなくなったことは周知のとおりである。
 新しく免許を取る人たちはいざ知らず、これまで、一度取得すれば永久・終身であったとされていた免許が突然10年限定とされてしまったことは制度的に合理性のあるものなのか、私には根本的な疑問がある。
 また、この講習は各大学が受け皿となって、現在、先導的試行がされている最中であるが、本格的始動の際に、日本全体として果たして受け皿は足りているのかという大問題がある。もし受け皿が足りないとなれば、それは免許更新を求められた教員側の責任ではありえない。条件が整わなければ、教員として身分を喪失する者が大量に出て、一挙に社会問題化する可能性がある。
 今回の大分県のような不正が正される必要があることは言うまでもないが、なぜ教員だけが優遇されるのか、なぜ教員には勤務評定がないのかという社会的な批判が強まる中で、教員に対する非難やバッシングが政治的に悪用される状況が進行している。そのように私は観察しているけれど、そうした教員バッシングに今回の事件が意図的に使われないか、悪用されないかと心配している。
 そもそも今回の教員免許法は、いわゆる「問題」教師の排除が目的ではないと言われている。
 そうは言っても、世間からすれば、「問題」教師をどうするのかという関心が高いだろう。
 現場の教員は、日々、生徒から、また保護者から評価を受けている。鬱病の教師が増えているほど、現場の教員に対するプレッシャーは強い。
 「問題」教師が生まれないようにするにはどうしたらよいのか。その解決法を探らないといけないことは言うまでもないが、その解決方法は教員免許法なのかという論点があると思う。
 教員免許法については、いずれにせよ、早晩社会問題になると思われるので、また改めて書くことにしたい。
 以下、毎日新聞からの引用。

<教員採用汚職>不正に良心の呵責…逮捕の参事に口利き集中
7月11日15時2分配信 毎日新聞


 「前年に(不正によって)落とした受験生が次の年に合格圏内に入ったら、心底うれしかった」−−。大分県の小学校教員採用試験を巡る収賄容疑で再逮捕された県教委義務教育課参事、江藤勝由容疑者(52)が関係者に対し、不正に手を染めながらも良心の呵責(かしゃく)に揺れる心を打ち明けている。

 関係者によると、08年度の採用試験では、口利きのあった受験者の点数を加点する改ざんに伴って減点され不合格になった受験者が約10人いるという。本来合格するはずだった受験者の点数を減点操作していた江藤容疑者。過去の改ざんによって不合格になった受験者の名前をメモで残していた。その受験者が翌年の試験で合格圏内にいる場合、減点操作の対象から外すなどして意図的に合格させていたという。

 江藤容疑者は別府市出身。大分、別府両市の教諭などを経て、03年から逮捕されるまでの間は人事班に所属。07年は小・中学校の教員採用試験結果の集計や最終合格者リストの起案をする立場になった。出世コースでもあったが、人事班配属になった際に「(口利きによる不正採用は)うわさに聞いていたが、本当にあるんだ」とがく然としたという。07年度の採用試験にあたり、元県教委審議監、二宮政人容疑者(61)=収賄容疑で逮捕=に受験者成績一覧表を示すと、口利きがあった受験者に印が付けられ「最後まで通すように」と指示されたという。

 県教委の佐伯教育事務所在任中(98年から2年間)に、県教委参事、矢野哲郎容疑者(52)=贈賄容疑で再逮捕=と知り合った。江藤容疑者は人事班に入って以降、口利きによる不正の多さについて「もううんざりだ。こんなことやってられない」と、矢野容疑者に愚痴をこぼしていたという。

 江藤容疑者に合格依頼の口利きが集中していたが、「何の見返りもないことが多く、大半を汚れ役に徹していた」と言われる。

 こうした事情を知った矢野容疑者は小学校校長、浅利幾美被告(52)=贈賄罪で起訴=に「今度(浅利被告の長男長女の合格依頼の際)は直接、本人にお礼をしよう」と告げ、贈賄工作を持ちかけていたという。

 08年度採用試験の際に浅利被告から現金と金券計400万円を受け取った江藤容疑者。ところが発覚を恐れ「矢野さんの時(07年度採用試験の贈収賄事件)だけでやめておきたかった」と周辺に打ち明けたという。だが、今年3月、佐伯市内の校長、教頭の3人から昇進の謝礼として計110万円の金券を受け取っていた疑いも浮上した。金まみれの職員採用、内部昇進……。関係者からは「次第に感覚がマヒしたのだろう」との指摘も上がっている。【金秀蓮】


 次は読売新聞から。

教員採用汚職「組織的」反論できない…大分県教育長が会見
7月11日23時51分配信 読売新聞


 教員採用汚職に揺れる大分県教委の小矢(こや)文則教育長(60)は11日、記者会見し、逮捕者5人を出した一連の事件について、「組織的と言われても反論できない。(問題は)属人的というだけでは済まない」と発言し、組織的な不正だったとの見方を示した。

 逮捕された複数の幹部や県議らが証言した採用試験での金品授受や口利きの横行については、「自分は一切知らなかった」とした上で、「商品券や現金をもらったことも、県議の口利きを受けたこともない」と自身の潔白を強調した。

 小矢教育長はまた、合格圏内に入りながら不合格となった受験生の救済について「文部科学省からも対処するよう指示されている。しかし、今はそれがだれか特定する材料がない」と打つ手がない現状を明かした。

 さらに佐伯市の小学校で校長や教頭ら5人が不在となっている異常事態については「教育する側がこういうことをしてしまい、子どもたちにどう説明していいか分からない。申し訳ないの言葉だけ」と陳謝した。

 一方、県教委は11日の定例会で、贈賄罪で起訴された佐伯市立小校長・浅利幾美被告(52)を懲戒免職処分にすることを決めた。

 県教委には抗議の電話やメールが絶え間なく届き、職員は通常業務もままならない状態という。内容は「事件は氷山の一角ではないか」「不正に採用された教員は辞めさせろ」といった非難が大半。「『もし不正がなければ合格していたかも』と思うと、たまらなくなって電話しました」と訴える人もいた。

最終更新:7月11日23時51分