スタインベック(John Steinbeck)の小説”The Grapes of Wrath”が出版されたのが1939年。
ジョン・フォード(John Ford)監督。Tom Joad役でヘンリー・フォンダ(Henry Fonda)主演の映画"The Grapes of Wrath"が公開されたのが1940年。音楽担当は、アルフレッド・ニューマン(Alfred Newman)*1。
私は、30年ほど前に半年サンフランシスコに滞在したのち、グレイハウンドバスでアメリカ合州国を2か月ほど旅したことがある。また20年以上も前のことになるが、大西部をレンタカーでまわったこともある。だからほんの少しだが西部は多少の土地勘がある。
いまでこそHistoric Roadとして観光名所の旧道扱いになっているが、Route 66は、Chicago, Illinoisから LA, Californiaへと続く当時の大動脈*2であった。
映画「怒りの葡萄」では、Sallisaw, Oklahoma、New Mexico, Arizona, Californiaと、仕事を求めて、このRoute 66を移動していく。
Needles(California)も1991年の自動車周遊旅行の際に立ち寄った記憶がある。Californiaに入る前の砂漠(desert)など、西部は、ロッキー山脈を越えなければならないから、the Golden StateというニックネームのCalifornia*3に入るまでが大変だ*4。
アメリカ経済がまだよかった1920年代。人々は株価は上がっていくと信じ、株を買い、銀行から借金をしても株を買っていた。1929年に株価が急激に下がり、パニックになって株を売り始めた。これが悪循環となり、銀行は貸付を回収できず、人々も銀行から自分の金を引き出すことができなくなった。大恐慌(Great Depression)時代への突入である。
オクラホマ(Oklahoma)の農民たちも、食えない絶望的な状況に追い込まれ、故郷を出ていくしかなかった*5。
「怒りの葡萄」は、資本の蓄積による家族崩壊の過程を描いている。貧乏人は団結し組み合うしかない現実を描いている。しかし、団結し組み合っても勝てない、負けていく構造をも描いている。
途中で寄るdiner*6で、15セントするパンを買う際に10セント分だけ欲しいという場面。子どもに甘いものを買ってやろうとする場面は、涙なしに見ることができない。
カリフォルニアのキャンプ地で食事をつくる際に、腹をすかせた子どもたちが言葉少なくむらがってくる。
元牧師でストの指導者の一人になるJim Casyも重要な役割を演じるが、母親役のジェーン・ダーウェルがいい。子どもたちに少ない食事を分け与えるのだ。
その母親と別れる最後の場面のTom Joadのセリフが象徴的だ。
*1:Alfred NewmanはRandy Newmanの叔父にあたる。
*2:Route 66は、Mother Roadと呼ばれる。現在は、一大観光地として、ghost townなどが記載されている地図もあるようだ。
*3:映画では、Californiaのことをland of milk and honeyと言っている。land of milk and honeyは聖書からか。すべてのものが豊富にあるイメージの場所のことを言っているのだろう。
*4:"California here I come"という歌がある。Lucy Showでも聞いた記憶がある。
*5:砂嵐、The Dust Bowlは、オクラホマ出身のfolk singerであるWoody Guthrieを思い出させる。
*6:トラック運転手が寄るような簡易食堂のこと。