平田オリザ「演劇入門」を読んだ

演劇入門


 平田オリザさんの「演劇入門」を面白く読んだ。


 キーワードで面白いと思ったものをランダムに書き留めてみると…。

 「テーマ」「セミパブリックな空間」「観客の想像力」「作品冒頭における自然な形での問題提起」「内部と中間と外部の比率」「情報量の差」「想像力、記憶力、観察力」「想像ー記憶ー観察」「対話」…。


 そして、興味深かったのは、「演出家と俳優との関係」である。

 

ただ怒鳴るだけで、俳優を一方的に自分のコンテクストの内側に入れようとする行為は、「演出」と呼べるものではない。優れた演出家は、彼の演劇様式によって、劇作家の仮想する言語のコンテクストと俳優の言語コンテクストの擦り合わせを行う。また、演出家の仮想する身体のコンテクストと、俳優の身体のコンテクストの擦り合わせを行う。そのような行為に、一定の時間をかける者だけが、現代演劇の演出家と呼ぶに値する。

仮説とその検証という反復を行えない演出家は、問題点の把握と指摘ができず、結局「ガンバレガンバレ」と叫ぶか、自分のコンテクストやイメージを、俳優に暴力的に押しつけるしかなくなってしまうのだ。

現代演劇における俳優の要件とは、その存在の弱さと孤独を知り、同時に俳優とは何かを常に問い続け、俳優の誇りとは何かを考え続ける存在であるということだ。俳優の尊厳と主体性は、そこ以外にはない。

 これは教育にも通じることだ。
 つまり、現代教育における教師の要件とは、その存在の弱さと孤独を知り、同時に教師とは何かを常に問い続け、教師の誇りとは何かを考え続ける存在であるということだ。教師の尊厳と主体性は、そこ以外にはない。