「「平和安全法制」名称に反発 野党「国民欺く」、与党はイメージ考慮」

 以下、朝日新聞(デジタル版2015年5月16日05時00分)から。

 安倍内閣が15日、安全保障法制の関連11法案を国会に提出し、国会審議をめぐる与野党の攻防が活発化してきた。与党側は10本の改正法案を一つにまとめて出すなど審議のスピードを上げ、今国会中の成立をめざす。対する野党は、法案の名称や特別委員会の構成などで注文をつけており、論戦前から対決構図が鮮明になっている。

 まず、攻防の焦点になったのは「名前」だ。

 自民党佐藤勉国会対策委員長は15日の与野党国対委員長会談で、衆院で法案を審議する特別委員会の名前を「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」とする案を野党側に示した。安倍政権は11法案の総称も「平和安全法制」としており、この言葉を強調している。

 背景には、政権が法案に対する世論のイメージを気にしていることがある。

 「特定秘密保護法は名前が悪いと言われたので、今回はこういう名前にした」。安倍晋三首相は15日に開かれた父の故・安倍晋太郎元外相をしのぶ会のあいさつで、昨年12月に施行された特定秘密保護法をこう振り返った。政権内には、法律に「特定秘密」という言葉を入れたことで、政府が秘密を抱え込んでいるような印象を与えたとの反省がある。

 今回の安全保障関連法案をめぐっても、社民党福島瑞穂前党首が4月の参院予算委で、法案を「戦争法案」と呼んだことに自民党が反発。修正を求めた。政権側は世論がマイナスの印象を抱き、法案や内閣に対する支持が下がることに敏感だ。首相は15日の衆院本会議で「平和安全法制について、戦争法案とか無責任なレッテルを貼るのではなく、中身ある議論をしていきたい」と強調した。

 一方、野党はこうした「名前」について、「『平和安全法』なんて言っているのは国民を欺くものだ。特別委は名前からして駄目だ」(共産党穀田恵二国対委員長)と反発。自民党内からさえ、「ずいぶんとってつけたような名称だ」(幹部)との声も出ている。


 ■委員構成も焦点

 野党は特別委の構成をめぐっても与党と対立した。

 与党は衆院議院運営委員会理事会で、45人の特別委の会派別の枠を自民28、民主7、維新4、公明4、共産2と提案したが、野党側は「少数政党も特別委に参加できるようにすべきだ」と主張。自民枠を譲って、社民党生活の党と山本太郎となかまたちを入れるよう求めた。質問できる野党の数を増やし、質問時間をできるだけ長く確保して今国会での成立を阻止するほか、より多様な論点から法案をただす狙いがある。

 さらに、民主は委員会運営について交渉する野党筆頭理事に、「ミスター年金」として自民党政権を追及したことで知られる長妻昭氏を充てることも内定。対決の象徴にしたい考えだ。

 野党は審議のやり方でも与党に抵抗する。与党が審議のスピードアップを狙い、10本の改正法案をひとくくりにして審議を求めていることに対し、「10本を束ねて1本にするのは極めて乱暴な話だ」(民主の高木義明国対委員長)などと批判。国会審議の「入り口」から政権との対決をアピールする方針だ。

 (安倍龍太郎、上地一姫)