「ラグビー日本、また一つ歴史刻んだ 全員が走り体張った」

f:id:amamu:20051228113106j:plain

 以下、朝日新聞デジタル版(2015年10月4日08時06分)から。加工・編集されて、10月4日の朝刊に掲載。

 写真・図版 サモアに勝利し、選手に笑顔を見せるエディー・ジョーンズHC=AFP時事
 写真・図版 (3日、ラグビーW杯1次L 日本26―5サモア

 薄曇りの英国・ミルトンキーンズで、日本は世界に証明した。2週間前、南アフリカを倒した実力は偽りではなかった、と。

ラグビーW杯、日本がサモアに完勝 決勝Tに望みつなぐ
ラグビーワールドカップ2015

 信念がなければ、日本のラグビーはできない。小さな人間たちが、大きくて強い相手にどう勝つか。エディ・ジョーンズヘッドコーチが考え、選手たちがのみ込んだ答えは、何よりまず、走り勝つことだった。

 地道に、サモアの防御の厚い部分に体をぶつけ続ける。個々の力で劣る分、日本は人数で上回った。倒れてもすぐに起き、相手より速く集散した。安易なキックには逃げず、ボディーブローのようにサモアの体力を削った。

 その我慢が、相手の反則を誘発した。いらだつサモアは前半、2人の一時的退場者を出した。20分過ぎ、日本は相手FWが1人少ない優位性を生かし、スクラムを押し込んでペナルティートライ。終了間際には連続攻撃で相手防御を崩し、大外で1対1の状況を作りあげた。アメリカンフットボール経験もある山田が、華麗なターンで右隅にトライを決める。日本は多くの時間を、自分の土俵で戦い続けた。

 この4年、厳しい指揮官の下、何度も何度も合宿を重ねた。家族よりはるかに長い時間を共に過ごした選手たちは、固い絆で結ばれた。小野の体を投げ出すセービング。松島やホラニの意を決したタックル。そして、密集で真っ先に体をぶつけた主将リーチの献身。チームへの愛着がなければ、こんなにも全員が体を張ることはできない。

 五郎丸は言う。「ラグビーは人の心を動かし、感動させることができる」と。心揺さぶる戦いで、赤と白の勇者たちがまた一つ、日本ラグビーの新たな歴史を刻んだ。(野村周平