「歌は人をつなぎ、癒やし、励ます。日本に様々な音楽を届けてきた2人のDJに、「歌の持つ力」「世界を変えた歌」について聞いた」という「世界はうたう」のコラムで、10曲が紹介されていた。
ピーター・バラカンさんが選んだ5曲
- We Shall Overcome (Pete Seeger) 1963
- Ohio (Crosby Stills Nash & Young) 1970
- Imagine (John Lennon) 1971
- Get Up, Stand Up (Bob Marley) 1973
- Free Nelson Mandela (The Special AKA) 1984
クリス・ペプラーさんが選んだ5曲
- 上を向いて歩こう(坂本九) 1961
- Blowin' In the Wind (Bob Dylan) 1963
- Bangladesh (George Harrison) 1971
- Imagine (John Lennon) 1971
- Fight the Power (Public Enemy) 1990
以下、朝日新聞デジタル版(2016年1月1日05時00分)から、ピーター・バラカン(Peter Barakan)さんのものを紹介する
歌には、何よりも人をまとめる力がある。歌詞だけではなくメロディーも、そして歌うという行為自体がエモーショナルなものだ。
ベトナム反戦運動、南アフリカの反アパルトヘイト運動でも、歌の貢献は大きかった。またボブ・マーリーが歌うレゲエのビートはジョン・レノン以上に世界中に影響を及ぼした。虐げられていた弱者が、彼の歌からどれだけ力を得たか。歌にこれだけ力があるから為政者も恐れる。公民権運動をリードしたピート・シーガーは長年、米連邦捜査局(FBI)に内偵調査されていたという。
私自身が歌の力を初めて感じたのは12歳くらいの頃。ボブ・ディランの「風に吹かれて」を聞いた時だった。政治のことは何も分からなかったが、何を言おうとしている歌詞なのか、初めて聞いた時から深く印象に残った。
今は歌がネット配信され、イヤホンで各自が聞く時代。何がヒット曲なのか分からなくなった。
世界の誰もが知っているヒット曲というのは、ラジオから流れて、みんなの耳に同時に触れるものだ。かつては米英のヒットチャートが注目されたが、それも薄れた。米国自体が内向的になり、影響力が減ったことも理由にあると思う。ただ悪いことばかりではない。ユーチューブやストリーミングによって、世界中どんな音楽でも聞けないものはなくなった。
各国のラジオ放送も聞ける。キューバのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのように、英語圏以外のアーティストが広く聞かれる例もある。
平和を祈って世界中で同時に同じ歌を歌おうというイベントも可能になった。
ネットでシェアされて世界に広がったファレル・ウィリアムスの「ハッピー」(2014年)は、そんな時代の、まれにみる大ヒット曲だ。乗りやすいリズム、単純なメッセージ。誰もが、その曲を耳にするひととき幸せになれる。歌の良さとは、そういうところかもしれない。