「「うろつき」の判断基準は? 都の改正迷惑防止条例成立」

amamu2018-03-30

以下、朝日新聞デジタル版(2018年3月29日21時28分)から。

「みだりにうろつくこと」は、あえて言えば、ときに、とくに権力をチェックするためのジャーナリストにとって、必要不可欠な行為である。
市民やメディアの活動を縛り規制するような条例は避けるべきだ。皮肉を込めて言えば、改ざんや隠蔽が行われないように、権力に対するチェック、公文書管理、情報公開に役立つ政策をすすめるべきだろう。
改ざん隠ぺい内閣のもとで、東京都の改正迷惑防止条例とは、これもあべこべ政治の悪政の一端といわれても仕方あるまい。

 「みだりにうろつくこと」を規制対象に新たに加えるなどした東京都の改正迷惑防止条例が29日、都議会本会議で共産などを除く賛成多数で可決、成立した。規制対象と認定する基準があいまいだとして、市民運動や報道機関の取材活動への悪影響を懸念する声もある。施行は7月1日。同様の規定は17道府県の条例に盛り込まれている。

 知人同士のトラブルで、男が相手の自宅周辺をうろつく――。改正条例案を提出した警視庁は、こうした事案に対応できるようになると説明する。

 警視庁によると、実際こうしたトラブルが過去にあったが取り締まりの対象にならなかった。うろついていた男は後日、被害者を蹴るなどして5日間のけがを負わせたとして、傷害容疑などで逮捕されたという。

 改正条例は、「つきまとい」「粗野・乱暴な言動」「連続電話」「汚物の送付」の4類型だった規制対象に、「監視していると告げること」「名誉を害する事項を告げること」「性的羞恥(しゅうち)心を害する事項を告げること」の3類型を追加。「つきまとい」の定義に、住宅周辺での待ち伏せや見張りなどに加えて「みだりにうろつくこと」を新たに盛り込んだ。また、電話やファクスを想定していた「連続電話」に電子メールやSNSなどへの連続送信を追加。7類型のいずれも「反復して行ってはならない」としている。

 条例が規制するのは、恨みやねたみなど「悪意の感情」に基づく行為。恋愛感情に基づくものは、8類型に分けられてストーカー規制法で禁じられている。逆恨みから、相手の自宅に相手を中傷する内容の文書やひわいな写真などを繰り返し送りつけるような事例も、改正条例で取り締まりの対象になり得るという。

 改正条例は盗撮行為を規制できる場所も拡大した。電車や銭湯など公共の場所に加え、住居内やホテルの居室などの私的空間や、学校、会社の事務室といった不特定または多数の人の出入りがある場所にも広げた。

 迷惑防止条例の内容は各都道府県によって異なるが、警視庁などによると改正都条例と同様に「うろつき」行為やメールの連続送信などを規制する規定は、すでに北海道や三重県大阪府、鹿児島県など14道府県の条例に盛り込まれて運用されており、ほか3県でも成立している。

 条例が改正された埼玉県では昨年12月、交通事故の相手当事者に「逃げられると思わないでください」などと書いた電子メールを約5分間に3通連続送信するなどした疑いで女が逮捕された。

 一方、弁護士団体や市民団体の中には、国会前などでのデモや、労働組合の企業前でのビラ配布、報道機関の取材などが「みだりなうろつき」「名誉を害する事項の告知」などに当たるとして規制されかねないと改正に反対意見がある。29日の都議会本会議にも多くの傍聴人が駆けつけ、改正条例が成立すると、傍聴席は一時騒然とした。共産党都議会議員団によると、29日までに約9千の反対を訴える要請書や署名が届けられたという。

 都の条例には「都民の権利を不当に侵害しないよう留意し、本来の目的を逸脱して乱用してはならない」との条文が盛り込まれている。警視庁の担当者は「懸念されている行為は憲法で保障された正当な市民活動で、規制の要件には当てはまらない。これまでも同条例で取り締まった例はなく、今後も運用方針は変わらない」と話す。

 甲南大法科大学院園田寿教授(刑法)は「条例違反は比較的軽微な犯罪だが、軽微な犯罪ほど現場の裁量は大きい。具体的にどのような行為が検挙の対象となるのか、注視していくべきだ」と指摘。改正について「市民活動の萎縮につながりかねず、政治や経済、文化の中心である東京でこのような条例ができることの影響は大きい」と話している。(荒ちひろ