井上ひさし「日本語教室」を再読した

 井上ひさし著「日本語教室」は、2001年10月から上智大学で、月一回、都合四回おこなわれた講演会をもとにした新書。
 これを再読した。

 第一講「日本語はいまどうなっているのか」では、「アメリカ中心のグローバリズム」に、「言語の面から反対」する立場で書かれている。小学校の英語教科の導入や、外来語の氾濫などについて触れながら、「母語は道具ではない、精神そのものである」と主張する。平和主義についても触れている。
 第二講「日本語はどうつくられたのか」は、原縄文語のはなし。ウラル・アルタイ、ピジン律令政治、漢語、明治維新グローバル化などに触れつつ、「日本語はどうつくられたのか」の仮説のおはなし。
 第三講「日本語はどのように話されるのか」は、日本語の音韻について。
 斎藤茂吉、同音意義語、語呂合わせ、音読、アクセントとリズムなど、井上ひさしらしい切り口でとても面白い。
 第四講「日本語はどのように表現されるか」は、文法のおはなしだが、紙幅が足りないせいか、助詞や語順に簡単に触れた程度の内容になっている。敬語や動詞の活用などについても触れてほしいところだ。
 ロジャー・パルバースさんの話は面白い。


 本書の「はじめに」で、井上ひさしは次のように書いている。

 ・・・そこで目立つのは、いい年配の日本人の日本語、特に政治家、官僚、そういう人たちの言葉です。非常に貧弱で、よくない。

 わたしが持っている本書の発行年は2011年。
 実に情けないことに、いまの安倍政権のもとで、「目立つのは、いい年配の日本人の日本語、特に政治家、官僚、そういう人たちの言葉です。非常に貧弱で、よくない」傾向は、ますます強まっていると言わざるをえない。