大阪市発注の電気工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は6日、入札情報を電気工事会社に漏らした見返りに計約700万円相当の現金や車などを受け取ったなどとして、大阪市建設局職員の青木伸一容疑者(45)=大阪市=を官製談合防止法違反と加重収賄などの容疑で逮捕し、発表した。

 特捜部はほかに、同職員の坂東浩樹容疑者(45)=兵庫県芦屋市=を官製談合防止法違反などの疑いで、大阪市の電気工事会社「アエルテクノス」社員の白木京介容疑者(47)=大阪府吹田市=を同法違反や贈賄などの疑いで逮捕。特捜部はいずれも認否を明らかにしていない。

 特捜部などによると、青木容疑者は2014年12月~17年6月の大阪市発注の電気工事27件の入札で、白木容疑者に非公開の設計金額などを漏らした見返りに135万円を受領。16年4月~18年10月には、白木容疑者から現金100万円を受け取ったり、車(約400万円相当)や旅行代金(計約60万円)の提供を受けたりした疑いがある。

 坂東容疑者は17年11月~18年3月の市発注の電気工事など3件の入札で、白木容疑者に事前に直接工事費を漏らした疑いがある。

 複数の関係者によると、白木容疑者と青木容疑者は懇意な関係で、会食やメールで入札情報をやりとりしていたという。アエルテクノス社は白木容疑者の情報をもとに、複数の業者にそれぞれ価格をずらした入札額を伝え、自社や関係業者が落札できる仕組みを作って談合を繰り返し、利益を確保していたという。

 特捜部は1月24日に大阪市住之江区の市建設局や同社などを家宅捜索し、市職員や同社関係者への事情聴取を続けてきた。(一色涼、多鹿ちなみ)

「電気村」になっていた

 6日夜、大阪市役所。職員2人が官製談合防止法違反などの容疑で逮捕された市建設局の幹部らが、急きょ記者会見を開いた。横田哲也工務担当部長は「あるまじき行為だ」と声を震わせ、謝罪。2人の勤務態度はまじめで、業務中に問題を起こすことはなかったという。

 逮捕された2人のうち、青木伸一容疑者は2007年から12年間にわたって、電気系の道路公園設備担当として勤務。落札の上限となる予定価格が記された設計書に自由にアクセスできる立場だった。年間50以上の工事について、課長ら幹部間で共有する予定価格を知ることができたという。

 16年には、談合を見抜けるチャンスもあった。業者から寄せられた「市職員が予定価格を漏らしている」などの情報に基づき、建設局と契約管財局は調査を実施。青木容疑者と、同じく建設局職員の坂東浩樹容疑者も調査対象だった。建設局幹部らが30分ほど聞き取りをしたが、2人は「外部に漏らしていない」などと否定したという。

 30代の技術系の市職員は「電気関連の部署は異動が少なく『電気村』になっていた」と指摘。吉村洋文市長は6日、朝日新聞の取材に「個人的な犯行か、組織的な犯行か、しっかり見極めたい」と語った。今後、市は逮捕された2人に接見して事情を聴く方針だ。(遠藤隆史、渡辺元史)