「京マチ子さん、妖艶美で世界を魅了 実生活では目立たず」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年5月14日22時17分)から。

 世界で最も有名な日本の女優といえば、たぶん京マチ子さんになるだろう。1951年、敗戦後の日本を元気づけたベネチア国際映画祭での黒澤明監督の「羅生門」の金獅子賞は、彼女の東洋的な妖艶(ようえん)な美しさも一役買ったに違いない。

 「雨月物語」「地獄門」を含め、出演作が国際映画祭で相次いで受賞した。3本には共通点がある。一つは時代劇であること。もう一つは、京さんの演じた女性が色香で男性を狂わせていくことだった。56年にはハリウッドに招かれ、「八月十五夜の茶屋」の芸者役でスター俳優マーロン・ブランドと共演した。洋装の名作も数多いが、海外が望んだのは和装の美だった。

 当時、京さんの所属していた大映には若尾文子さんや山本富士子さんらがいて女優王国を形作っていた。彼女たちの出演作は他社の映画と比べ、大人っぽい雰囲気を醸し出していた。大映映画に特徴的なドロッとした濃密な映像も、京さんを中心とした女優の魅力を最大限に引き出していた。

 華やかな役柄で才能を発揮した京さんだが、実生活では目立つことを好まなかった。一線を退いた後、公の席に現れることはなかった。(編集委員・石飛徳樹)