「田原総一朗氏「無知蒙昧な発言」 丸山議員に広がる怒り」

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 日本維新の会は14日、北方領土返還の手段として戦争を正当化するかのような質問を元島民にした丸山穂高衆院議員を、除名処分とした。ビザなし交流のさなかに飛び出した発言に、与野党などから一斉に批判の声があがった。

 北海道では、戸惑いや怒りが広がった。

 「戦争のために我々は島をとられて苦労した。だから戦争は絶対してはならない。そんなことをまさか国会議員が言うとは……」

 歯舞群島(勇留〈ゆり〉島)の元島民で、千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長の角鹿(つのか)泰司さん(82)は驚く。

 8歳の時にソ連軍の侵攻に遭い、翌年に命からがら島を脱出した。故郷に戻れる数少ない手段のビザなし交流が、規制で厳しくなることを懸念し、不安を口にした。「我々も年をとり、運動を2、3世に託す時にある。自由な交流ができないと、大きな支障となる」

 訪問団の一人で北見市の元島民2世の北村浩一さん(59)は、丸山氏の言動に有志の形で抗議した。「ロシアとの折衝にマイナスになるのであれば、本人はしっかり責任をとってほしい」と語った。

 1992年に始まったビザなし交流訪問団の実現に尽力し、95年に国会議員として初めて渡航した新党大地代表の鈴木宗男氏も「元島民も平均年齢84歳。人生限られた中、どんな思いで足を踏み入れているか。涙が出る思いだ。許せない」と非難した。

 国連憲章は、自衛と安全保障理事会が認めた場合を除き、武力行使を禁じる。日本は憲法9条戦争放棄を定めている。ジャーナリスト田原総一朗さんは「戦争を経験していない政治家が増え、昭和の戦争への反省も知らない無知蒙昧(もうまい)な発言だ」と指摘。「日本は専守防衛を貫いてきたことさえ知らず、たるみきっている」と突き放した。

 自衛隊制服組トップの統合幕僚長を4月まで務めた河野克俊氏も取材に対して「非常に不適切で論外、むちゃくちゃです。自衛以外の戦争は国際法違反だと知らないのでしょうか」と語った。軍事アナリストで東京大先端科学技術研究センターの小泉悠特任助教は「戦争は日本がとりうる選択肢ではない。ロシアは北方領土を想定した軍事演習でも、核を使うシナリオを持っている。軍事的手段を軽々しく口にすべきではない」と話す。

 ロシアの通信社も、丸山氏の発言と、日本国内での反応を報じた。ただ、日本維新の会が丸山氏を除名処分にしたことや、丸山氏から質問された元国後島民の大塚小彌太団長が戦争による解決を明確に拒否したことなども伝えられているためか、ロシア国内で表だった批判や反応は見られない。

 ロシア上院のコサチョフ国際問題委員長は13日、丸山議員の発言について記者団から聞かされ、「もし(発言が)本当なら、日ロ関係にとって最低だ。そうした発言をするのは、問題の本質的な解決を望まない人物だけだ」と突き放した。

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 同行記者団の音声データに基づく、丸山議員と元島民の団長との主なやりとりは次の通り。

 丸山氏「団長は戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」

 団長「戦争で?」

 丸山氏「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはオーケーですか」

 団長「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」

 丸山氏「でも取り返せないですよね」

 団長「いや、戦争はするべきではない」

 丸山氏「戦争しないとどうしようもなくないですか」

 団長「戦争は必要ないです」

(中略)

 団長「率直にいうと、返してもらったら一番いい」

 丸山「戦争なく」

 団長「戦争なく。戦争はすべきではない。これは個人的な意見です」

 丸山「なるほどね」

 団長「早く平和条約を結んで解決してほしいです」