「護衛艦「いずも」、最初の利用は米軍機 日本側が伝える」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年8月21日7時0分)から。

 事実上の空母に改修される海上自衛隊最大の「いずも」型護衛艦をめぐり、日本側が今年3月、米軍首脳に対し、米軍機が先行利用する見通しを伝えていたことがわかった。航空自衛隊への戦闘機F35Bの配備に先立って空母化を進め、米軍との連携を強化する方針を示した形だ。

 複数の日本政府関係者が明らかにした。

 今年3月26日、来日した米海兵隊トップのネラー総司令官(当時)は安倍晋三首相を表敬訪問したほか、岩屋毅防衛相らとも懇談した。日本側の関係者はネラー氏に対し、昨年末に策定された防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画に基づき、「いずも」型護衛艦の「いずも」と「かが」の2隻を空母化する計画を説明した。海自の艦艇に5年に1度実施される定期検査の期間を使って改修に乗り出す方針を伝えた。2014年度末に就役した「いずも」は20年度、16年度末に就役した「かが」は22年度、それぞれ甲板の耐熱の強化や整備庫、電源の工事などの改修が予定されている。

 日本側はあわせて、F35Bを念頭に短距離で離陸し、垂直着陸ができる戦闘機(STOVL機)について、予算計上から配備まで約5年かかるため、配備されるのは24年度以降になることも伝えた。

 空自へのF35Bの配備時期に先立って空母化を進める計画を踏まえ、日本側は日米共同訓練や、飛行中のトラブルで米軍機が緊急着陸する必要が生じた場合を想定し、ネラー氏に「改修後のいずも型護衛艦の甲板で発着艦する最初の戦闘機は、米軍のF35Bになるだろう。甲板上での戦闘機の運用の要領など協力と助言をお願いする」などと要請。ネラー氏も「できる限り支援する」と応じたという。

 政府はこれまで、いずも型の空母化の目的について「太平洋の防空強化と自衛隊パイロットの安全確保のため」と説明。米軍機の発着艦の可能性については「緊急時に(米軍機が)降りられる滑走路がないという場合もある。絶対に米軍のF35Bが護衛艦に載ってはいけないと申し上げるわけにはいかない」(岩屋防衛相)などとしていた。

何のための空母化か、説明を《視点》
 「いずも」型護衛艦である「いずも」と「かが」は、艦艇の定期検査のタイミングで改修される。先に空母化される「いずも」は、航空自衛隊へのF35Bの配備時期よりも少なくとも3年以上早く空母化されることになる。

 今年3月、2019年度予算案の審議で野党側からは、米軍のF35Bが発着艦するような訓練は、場所によっては中国への「明確なメッセージになりやめるべきだ」との指摘も出たが、岩屋毅防衛相は「(米軍機の発着艦が)能力的に可能というだけで現時点で検討や調整はしていない」と述べていた。にもかかわらず、直後に米軍へ「最初の着艦は米軍機」と伝えていたことが明らかになった。改修後の当面の間、米軍機が先行利用するとしたら、「太平洋の防空強化とパイロットの安全確保のため」と政府が主張する空母化の必要性に説得力はあるだろうか。

 そもそも、防衛省が17年度に外部委託した空母化に向けた調査では、改修の前提を「米軍の後方支援の実施」と記していた。想定される機種も米軍の「F35B」とされ、空自の戦闘機の運用は調査の目的に入っていなかった。

 自衛隊幹部は空母化について「空母化の検討のそもそもの始まりは、存立危機事態や重要影響事態の際、一緒に行動する米軍支援のためにいずも型を活用できないかという問題意識だった」と打ち明ける。

 着艦した戦闘機の整備、燃料・弾薬の補給や保管場所など具体的な検討は後回しにされ「空母化」だけが既成事実となっている。何のための空母化なのか。政府は国民が納得できる説明をする必要がある。(編集委員・土居貴輝)