「沖縄戦後史とカメジローの生涯 佐古忠彦監督、ドキュメンタリー映画第2作」

f:id:amamu:20051228113100j:plain

以下、朝日新聞デジタル版(2019年8月30日16時30分)から。

 沖縄の政治家、瀬長亀次郎を追ったドキュメンタリーの第2作「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯」が東京などで公開されている。第1作に続いて、監督はTBSの佐古忠彦。「沖縄の戦後史を見れば、日本の今が見えてくる」と話す。

 亀次郎は米占領下の沖縄で政治家になり、那覇市長や衆院議員などを務めた。あくまで民衆に寄り添う政治姿勢で米軍や日本政府と渡り合い、人々から圧倒的な支持を受け続けた。

 2017年の第1作「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」は、TBS「ニュース23」のキャスターだった佐古監督が制作したテレビ番組が元になっている。「1作目を見た方から『人間としての亀次郎をもっと見たい』との声をいただいた。今回は家族や恩師との関係にも重点を置きました」

 映画は、教職員の政治活動を制限する「教公二法阻止闘争」(1967年)、米国人の起こした交通事故を巡って群衆と警察が衝突した「コザ騒動」(70年)など、沖縄戦後史の重要事件を追いながら、亀次郎の生涯に迫る。

 2作品を通して伝わってくるのは、彼の弁舌の見事さと、民衆との距離感だ。返還直前の71年、佐藤首相との国会での論戦は強烈だった。亀次郎は自らのつらい体験を語り、「平和な島でなければ、豊かな島は作れません」と訴える。

 佐藤首相も「基地のない沖縄と言われても、すぐには出来ない」と真摯(しんし)な態度で反論し、きちんと議論が成立している。「今の国会を知る私たちには、与野党ともに新鮮に映りますね」と佐古監督。

 亀次郎を「先生」と呼ぶ者は一人もいなかった。このエピソードも、現代の国会議員を知る私たちには感慨深い。民衆に亀次郎ファンが多いことについて、本人は「ファンと言うよりも友だち」と語っている。

 佐古監督は言う。「亀次郎は『先生』と言われるのが本当に嫌いだったそうです。これだけ民衆との距離が近いからこそ、これだけ愛されたんでしょうね」

 語りは役所広司山根基世。1作目と同様、音楽で坂本龍一が参加している。(編集委員・石飛徳樹)