「在日米軍、軍内部の規律に危機感か 死亡事故に敏感反応」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2017年11月20日20時54分)から。

 那覇市で米海兵隊員が死亡事故を起こし、道路交通法違反(酒気帯び運転)などの疑いで逮捕された事件を受け、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は20日、翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事に面会して謝罪した。在日米軍司令部は国内の全米軍人の飲酒を禁止したことを発表。相次ぐ米軍の事故や不祥事に敏感に反応した。

 県庁を訪れたニコルソン氏は、翁長知事に頭を下げ「大変残念で悲しい。被害者とご家族にお悔やみを申し上げ、謝罪したい。我々が駐留することでこのような事件が起きたことについて、心より残念に思います」と謝罪の言葉を述べた。翁長知事は「綱紀粛正、再発防止に努めますと言われても、県民は何ら信用できない。とても良き隣人とは言えない」と応じた。

 在日米軍によると、20日から、沖縄にいる米軍人は基地と自宅以外への出入りが禁じられ、バーやクラブ、自宅での飲酒が禁止された。沖縄以外の国内の米軍人も基地内外での飲酒や酒の購入が禁じられた。期限は定められておらず、自宅での飲酒まで禁じるのは異例の措置だ。

 米軍はこれまでも軍人や軍属による事件が起きるたびに、外出禁止や飲酒禁止の措置を取ってきた。2012年10月に沖縄市で集団強姦(ごうかん)致傷事件が起きた時には、日本国内すべての軍人に夜間外出禁止令を出した。16年3月に那覇市であった準強姦事件では軍人の那覇市への夜間の出入りが禁じられ、5月にうるま市の女性の死体遺棄容疑で軍属が逮捕された際には「喪に服す」として1カ月間、沖縄の軍人や軍属とその家族全員の夜間外出を制限し、家や基地内での飲酒のみを認める綱紀粛正を命じた。

 ただ、服喪期間中の16年6月には米海軍兵が飲酒運転で嘉手納町の国道を逆走し、3人に重軽傷を負わせる事故が起きた。今回も、階級などによって午後11時〜午前5時は基地に門限を設ける措置が続いていた。ニコルソン氏は16日の記者との意見交換会で「不祥事をゼロにする。これまでの取り組みは(軍人らの)行動に影響を与えている」とアピールしたばかりだったが、翁長知事との20日の会談では「努力したと思っていたが、明らかに十分ではなかった」と反省を口にした。

 米軍の今回の措置について、沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は「軍内部の規律への危機感があるのではないか」とみる。米軍は最近、伊豆半島沖でのイージス艦衝突事故や沖縄県東村でのヘリ炎上事故などを起こしており、今回も米兵が軍の公用車を私用で乗り事故を起こしたとされる。「いずれにせよ、日米地位協定の不平等性の問題や沖縄への米軍基地集中といった問題と比べれば、飲酒禁止は本質的な対策とはとても言えない」と話した。

 那覇署によると、米軍キャンプ・キンザー(沖縄県浦添市)所属の上等兵ニコラス・E・ジェームズマクリーン容疑者(21)は19日早朝、那覇市泊2丁目の国道58号交差点で2トントラックを運転し、那覇市宇栄原2丁目、会社員平良英正さん(61)の軽トラックと衝突、平良さんを死亡させた疑いがある。呼気からは基準値の3倍近いアルコールが検出された。(小山謙太郎、上遠野郷)