以下、朝日新聞デジタル版(2018年10月9日19時00分)から。
8月に急逝した沖縄県の翁長雄志(おながたけし)前知事の県民葬が9日、出身地で市長も務めた那覇市で営まれた。県民や菅義偉官房長官、衆参両院議長ら計約3千人が参列し、任期途中での死を悼んだ。基地問題で対立を続けた菅氏のあいさつに対しては参列者から「帰れ」などと怒声が上がった。
県民葬は県や県議会などの主催で、昨年7月の大田昌秀元知事以来4人目。会場の県立武道館の2400席は埋まり、入りきれなかった人たちは、館外に置かれたモニターを見守った。
翁長氏の後継として9月の知事選で初当選した玉城デニー知事(58)は「県民が自ら持ってきたわけではない『基地』を挟んで『経済』か『平和』かと、常に厳しい二者択一を迫られてきた沖縄の現状に終止符を打とうとした。我々県民は遺志を引き継いで、子どもたちに平和で豊かな誇りある沖縄を託せるよう、一丸となって努力し続けることを誓う」と弔辞を述べた。
一方、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、対立が続いた菅氏は安倍晋三首相のあいさつを代読し「基地負担軽減へ一つ一つ確実に結果を出していく」と述べた。途中から「うそつき」「帰れ」など参列者から数十秒にわたって怒りの声が上がり、退場の際にも罵声が飛んだ。
友人代表としてあいさつした会社経営者の呉屋守将(もりまさ)氏は「これ以上の米軍基地負担は百害あって一利なしと考え、命をも投げ出す覚悟だった。県民はしっかり思いを受け止め歩んでいく」と功績をたたえた。
式典終了後、生前の翁長氏の様子をまとめた15分間の映像が流され、政府に抗議した場面などでは拍手が起こった。
その後、玉城知事は県庁で、宮腰光寛沖縄北方相と初会談した。国政野党6党・会派の国会対策委員長らとも面談し、今後の連携を確認した。(山下龍一)