「与党議員、政権「ヨイショ」のなぜ 身内も「やり過ぎ」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019/10/16 17:51)から。

 安倍政権が今国会の重要議案と位置づける日米貿易協定をめぐり、自民党議員が16日の参院予算委員会の質問で、安倍晋三首相や茂木敏充外相をほめちぎる場面があった。実は国会審議では、与党議員が質問時間を使って政権への「ヨイショ」と受け取られても仕方ないようなやりとりをするシーンが珍しくない。なぜなのか。

 「安倍総理、茂木大臣の卓越した外交能力、交渉能力により、非常に良いタイミングで短期間にまとめてくださったことを、日本国民を代表して感謝したい」

 自民で外務省出身の松川るい参院議員はこの日の質問でこう持ち上げた。与党席から「よし!」とのかけ声が上がる一方、野党席からは激しいヤジが飛んだ。

 松川氏はこの発言の直前には「日本の自動車工業の関係者」らが当事者であると指摘し、「当事者が評価していることが全てだ」とも強調。首相が前日に国会で「自動車工業会から、日米間の自由で公正な貿易環境が維持強化されるものだとの評価が発表されている」と答弁した内容と足並みをそろえた。

大臣の誕生日を「導入」に……
 松川氏はこの日の国会審議で、日中関係や日韓関係について政権の姿勢を尋ねたほか、男性の育児参加をどう支援していくかなどについても質問した。

 日米貿易協定をめぐる質問は、日中関係を話題にした後に持ってきた。話題を転換するためか、松川氏は「独自の外交を転換していくのが非常に大事だ」と述べたうえで、こう続けた。

 「(茂木)大臣の誕生日は10月7日だと承知している。くしくもその米国時間8日に合意された。協定の意義について教えていただければ」

 これには茂木氏も笑みを浮かべながら、「10月7日は私の誕生日でもあるし、ロシアのプーチン大統領の誕生日でもある」と答弁した。

 こうした松川氏の質問に対しては委員会終了後、野党議員が「単なるヨイショだ」と批判。自民党の閣僚経験者も「あれはやり過ぎ」と苦言を呈した。

過去にも「持ち上げ」質問
 今国会では、松川氏のほかにも安倍首相を持ち上げる質問があった。首相側近として知られる自民党世耕弘成参院幹事長は8日の参院代表質問で「人に対して何とも言えない優しさを示される。そういう総理の人柄に強くひかれた」と述べた。今国会ではないが、2017年には堂故茂参院議員(自民)が委員会質問で「(安倍)首相は答弁に立つたびに、必ず(スーツの)ボタンをおかけになる。礼儀を尽くしておられる姿、本当に好ましい」と述べたことがある。

 そもそも議院内閣制は与党が内閣を支える構造になっており、追及の手は緩みがちだ。長期政権になって首相官邸に権力が集まる「安倍1強」が定着する中、自民党内には官邸からにらまれるのを恐れる雰囲気があるという指摘もある。「ヨイショ質問」ではないが、谷川弥一衆院議員(自民)が16年、「あまりにも(質問)時間が余っている」と前置きして「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時……」と般若心経を唱えて、批判を浴びたこともあった。

 与党の質問は何のためにあるのか。行政府を「監視」するために、十分な役割を果たしているか。その「質問力」が問われている。

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 第200回臨時国会。国会論戦や各党の動きなど、政治家たちの様子を「国会ひとコマ」としてお伝えします。(三輪さち子)