以下、朝日新聞デジタル版(2019/12/25 7:00)から。
日本と中国の民間交流はどうすれば深まるか。15年間にわたって「中国人の日本語作文コンクール」を主催してきた日本僑報社(東京都豊島区)が11月、両国の相互理解の促進について話し合う「日中ユースフォーラム」を開いた。過去の作文コンクールに参加した両国の若者9人が集まり、言葉を学んだきっかけや将来の夢について語った。
日本語を学ぶきっかけは、成績が足りなかったから――。「まるか」さんはそう切り出した。
まっすぐ切りそろえた黒い前髪に丸い顔。「顔が丸いアニメのちびまる子ちゃんが好き。『まるか』と呼んで下さい」と話した。
本名は朱杭珈さん(25)。「まる子」ではなく「まるか」なのは、名前の日本語読み「こうか」にかけたものだ。
中国浙江省の自然豊かな農村の出身。貧しい家で両親は共に病を患っており、幼い頃から医者になることを夢みていた。大学入学の際、希望した学科に進むには点が足りず、日本語学科に振り分けられた。日本語の勉強を始めたのは仕方なくだった。
故郷では「日本のおじさんはスケベだらけ」「日本人は歴史を反省していない」と偏った話ばかり聞かされていた。
だが、大学で65歳の女性の日本語教師に出会い、中国で働く日本人に中国語を教える機会にも恵まれると、偏見は興味へと変わった。可愛いお土産においしい料理。「日本はどんなところだろう。この目で見て確かめたい」と思うようになった。
貧しい親の援助はあてにできない。留学のための奨学金を得るために挑んだのが、「中国人の日本語作文コンクール」だった。
1度目は落選。2度目は入賞したものの、奨学金をもらうには点数が足りなかった。「もう後がない」と臨んだ大学4年の時の試験で、やっと奨学金を獲得。昨春、奨学生として来日した。
今は一橋大学大学院で経営学を専攻する。ただ、グループワークでは自分の主張が理解してもらえず、「中国人の私を最初から排除しているのかな」と自信をなくしたこともあった。
なぜ理解してもらえないのか考えてみた。ふと「自分だって、知らない時は偏見を持っていたじゃないか」と気付いた。「『空気を読む』スタイルはまだ理解できませんが、無視されても少しずつ議論します。時間をかけると、だんだん理解し合えるようになりました」。将来は日本の医療技術を中国で生かす事業に関わりたいという。
早稲田大3年の高橋稔さん(21)は、今夏までの1年間、北京大に留学した。野球が得意で、中国人とのプレーを通じて「心の距離を縮められた」と振り返った。
高橋さんは、日中の相互理解を深めるためにこう提案した。「ネットやニュースだけで判断するのではなく、一緒に何かに打ち込めば、化学反応が起きる。日中の若者でスポーツ交流がもっと盛んになるといい」(今村優莉)