「高校生が大臣に「NO」 声を上げたら、政治が変わった」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/1/8 17:00)から。

 「おかしいと声を上げたら応援してくださる方が増え、第一歩を踏み出せた。本当に感謝しています」

 居並ぶ国会議員の前に立ち、語りかけたのは東京都内の私立高校に通う2年生だった。大学入学共通テストで予定していた英語民間試験活用の見送りが決まった昨年11月1日、国会の一室で開かれた「英語民間試験の延期を求める会」だ。

 ツイッターではChris Redfield Kenと名乗るケンさん(17)に改めて話を聞くと、最近まで政治ニュースはひとごとだと受け流していたそうだ。

 「だって政治家批判なんて、してはいけない雰囲気があるじゃないですか」

 え? どうして?

 「ふつう、話さないことになってるんです。学校や塾、部活で忙しくて余裕のない人ばかりだし。『決まってることなんだから、やめなよ』『言ってもむだだよ』という人もいる」

 ケンさんが変わったのは8月。当時の柴山昌彦文部科学相が、民間試験について「サイレントマジョリティは賛成です」とツイートした時だ。

 試験を受けるのはぼくたちなのに、声を受け止めずに決めるのか。怒りを覚えたケンさんは柴山さんに返信し、学校は不安な生徒の阿鼻叫喚(あびきょうかん)であふれていると伝え、「この声は拾ってくれませんか? いつからこの国は都合の悪い他の人の意見に耳を傾けようとしないようになってしまったのでしょうか?」と問いかけた。その後も「私は『声ある“少数派”』として直訴致します」などと訴えた。

 文科省前の抗議集会や「延期を求める会」に足を運んだ。その言葉が国会で高校生の声として伝えられた。見送りも決まった。

 ケンさんは中学の給食の時間に、毎日のように流れていた欅坂46の曲の話を始めた。その一つ、「サイレントマジョリティー」(作詞・秋元康氏)にこんな歌詞がある。

 「どこかの国の大統領が言っていた(曲解して) 声を上げない者たちは賛成していると」

 「No!と言いなよ!」

 好きな欅坂の曲から、なんとなくメッセージを受け取っていた。「言葉にしたら国や政治は変わる。民主主義って、そういうものかな」。いまはそう思う。

 ただ、8月以降のケンさんは、日本では「少数派」かもしれない。日本財団がこの秋、9カ国の17歳から19歳計9千人を対象に実施した調査によれば、「自分で国や社会を変えられると思う」「社会課題について積極的に議論している」などの質問に「はい」と答えた人の割合は、日本がダントツの最下位だった。

 サイレントな人たちと、サイレントマジョリティーを代表していると称する政治。確かに選挙はしているけれど、「民意」を映せているのだろうか。

 民主主義って、民意ってなんだろう。世界と日本の民主主義は大丈夫なのか。答えを探して街を歩き、話を聞いてまわった。

(後略)

(松下秀雄)