「登山家・田部井淳子のガッツ 海外で評価、ヒラリー氏も」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/11/30 17:00)から。

 昨秋、米国の政治家ヒラリー・クリントンと娘のチェルシークリントンの共著「The Book of Gutsy Women」が全米ベストセラーとなり、この中で、1975年に女性で初めてエベレストに登頂した故・田部井淳子(たべいじゅんこ)の半生が紹介された。この本のヒットを含め、海外ではいま「Junko Tabei」への再評価が広がっている。

 登山や環境保護活動、被災地支援などの分野で精力的に活動を続け、2016年に77歳で他界した「ガッツある女性」田部井淳子。様々な人々に継承されたその「ガッツ」と足跡を取材した。

女性初エベレストへ「登っちゃって、黙らせるんだ」
 田部井の「女性登山隊」が狙ったのはエベレストだ。圧倒的な男性社会である日本の登山界では、考えられないことだった。(中略)田部井は決心した。「登っちゃって、ごちゃごちゃ言う人たちを、黙らせるんだ」

 これは、クリントン親子が感銘を受けた100人以上の女性たちの伝記を集めた「The Book of Gutsy Women」の中の「Junko Tabei」の一節だ。同書は半世紀近く前に女性登山隊を組織し、世界で初めてエベレスト登頂を果たした田部井の物語を紹介。娘チェルシーは「田部井は『一歩踏み出し、次の一歩を踏み出す』というポリシーそのままに山登り生活を続けた」とコメントしている。また母ヒラリーは「世界の女性が田部井に続いた」とし、18年にアフガニスタン最高峰のノシャックに登頂を果たした女性登山隊の24歳隊員の、「女性はこれからも強くなる」という言葉を紹介する。

 この著作が出る約半年前には、英国の公共放送BBCのウェブサイト「ヒストリーマガジン」の特別企画「世界を変えた女性100人」で、田部井が57位にランクインした。日本勢ではもう1人、紫式部が79位に。田部井の秘書役を20年以上務めた吉田三菜子(みなこ)(54)は「意外な組み合わせに驚きましたが、よくぞ選んでくれたという思いです」と喜びを語る。

 海外での称賛は続く。田部井の生誕80年だった昨年9月22日、検索エンジン「グーグル」のロゴに、田部井が7大陸の最高峰を踏破する様子を描いたイラストが採用され、40カ国以上に配信された。11月には、冥王星の地形を撮影した米探査機「ニューホライズンズ」のチームからの提案を受け、国際天文学連合が、冥王星の山に「Tabei」と名付けた。

女性登山隊による初のエベレスト登頂を果たした田部井。人の力量を見極め、高みに挑ませる洞察力と人間力で多くの人を感化しました。後年は環境保全活動や故郷・福島を襲った東日本大震災の被災者支援にも尽力。その「ガッツ」は次世代に引き継がれることになります。

 (後略)

(浜田奈美)