小津安二郎監督の「秋刀魚の味」(1962年)を観た

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秋刀魚の味

 小津安二郎の「秋刀魚の味*1を観た。

 1962年の「秋刀魚の味」が小津監督の遺作のようだ。

 かなり前に多分何度か観たことがあるのだが、印象が薄い。若い時分だったので、地味過ぎる小津の映画をきちんと評価できなかったのだと思う。

 娘を嫁に出す父親の喪失感がテーマと思うのだが、さりげなく描かれているものの気がつくのは、戦争の描写だ。小津の映画は声高に叫ぶことはないが、戦争に対する感慨が底流に流れている。娘を嫁に出す気持ちは葬式や敗戦などと響きあうのだろう。

  そして登場する男子の幼児性とその幼児性に犠牲になっている女性たち。小津は批判的に描いているのか肯定的に描いているのか。その辺がよくわからない。そしてその辺が小津映画の評価のむずかしさと思う。

 内田樹氏が小津安二郎の「秋刀魚の味」について書いている。これがすこぶる面白い*2。 

 小津安二郎断想(7)「戦争について語らない男の話」 - 内田樹の研究室 (tatsuru.com)

 【内田樹】『秋刀魚の味』はなぜ日本映画オールタイム・ベストなのか──みんなで語ろう!「わが日本映画」 | GQ Japan

*1:An Autumn Afternoon (1962) - IMDb

*2:当たり前のことだが、これは、内田樹氏が小津映画に深い関心をもち、小津映画を何度も観て鑑賞しているからだろう。小津安二郎断想(1)「通過儀礼としての小津映画」 - 内田樹の研究室 (tatsuru.com)