小津安二郎監督の「一人息子」(1936年)を観た

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一人息子

 戦前の古い映画だが、きちんつくられた映画で楽しめた。

 信州と東京の対比と、当時の不況が背景にある。

 サイレント映画を撮り続けた小津監督によるトーキー初作品。

 野々宮つね(飯田蝶子)、野々宮良助(日守新一)、少年時代の野々宮良助(葉山正雄)、大久保先生(笠智衆)らが好演している。

 飯田蝶子は名優だ。初トーキーの立役者である撮影技師の茂原英雄は実の夫。

 孫引きだが、小津安二郎監督は、「人間は少しぐらい品行は悪くてもいいが、品性は良くなければいけないよ」「品行は直せても品性は直せない」と生前よく言っていたらしい。映画「一人息子」で、つね(飯田蝶子)の一人息子の良助(葉山正雄・日守新一)は、東京に出て、おそらく思うような出世ができなかったからであろう、結婚し子どもができても母親に報告もしない「品行」の悪さだ。しかし、ご近所でお隣の貧乏・困窮に同情し、助ける息子の姿を見て親として安心する。ここからすれば、一人息子・良助は「品性」は良いといえる。役名の「良助」は、そんなところからつけられたのかもしれない。