以下、朝日新聞デジタル版(2021/6/27 12:00)から。
新型コロナの規制解除を進めている欧州で、デルタ株の割合が高まっている。1回のワクチン接種だけでは十分に予防できないためだ。感染力の強いデルタ株は夏までに感染者の9割を占めると予想されており、感染拡大で再び規制に踏み切る国も出てきた。
ロイター通信などによると、ポルトガルは24日、首都リスボンで週末の飲食店の閉店時間を午後3時半にすると決めた。週末の首都圏への出入りも、ワクチン証明書か、陰性証明書がない限り禁止する。
人口約1千万人の同国の新規感染者は24日、1500人を超え、2月下旬以来の水準に達した。リスボンではデルタ株が7割を占め、政府は「数週間で感染者はさらに増え続ける」とみているという。
欧州疾病予防管理センター(ECDC)は23日、デルタ株が8月末までにEU内で9割を占めるとの予測を示した。英国では今月、デルタ株の割合が99%に達しており、欧州大陸でも広がった形だ。EUのフォンデアライエン欧州委員長は25日、「EUでも感染の拡大のスピードがあがっている」と危機感を示した。
フランスでも南西部ランド県でデルタ株の割合が7割に達し、カステックス首相は24日、同県のワクチン接種やPCR検査態勢を強化すると表明した。フランスでは人口のほぼ半数がワクチンを1回接種しているが、変異株への高い予防率を得られる2回の接種は3割にとどまる。国全体での新規感染者数は約2千人で、デルタ株の割合は1割だが、パリ首都圏を中心に今後割合が上昇すると予測されている。
ドイツでは、ロベルト・コッホ研究所によると、検査で陽性と判明した人のうちデルタ株の割合は6月半ばで15%。5月末は4%だった。規制緩和で、街で買い物や飲食を楽しむ光景が戻ったばかり。大幅に減ってきた感染者が夏場に再び増えるのを懸念する声が専門家らから上がっている。
ロシアも1日の感染者数が6月初めの2倍以上の2万人台に膨らみ、多くがデルタ株とみられている。特にモスクワは19日に過去最高の9120人を記録。高止まりが続いている。
当局は夏休みを前に抑え込みたい考えだ。飲食店やショッピングモールなどの事業者に、8月半ばまでに従業員の60%のワクチン接種を終えるよう命令。接種を拒むと出勤できないとされている。(パリ=疋田多揚、ベルリン=野島淳、モスクワ=石橋亮介)<<.