以下、朝日新聞デジタル版(2021/8/17 10:00)から。
新型コロナウイルス感染が急拡大し、緊急事態宣言が出されている中で開かれた東京オリンピック。この事態を感染症の専門家はどう見ていたのか。コロナ禍の初期から国立国際医療研究センターで診療に携わり情報発信を続けてきた大阪大学の忽那賢志(くつなさとし)教授に聞きました。
――新型コロナ感染拡大を受け、7月8日、東京五輪について政府や大会組織委員会などは首都圏の会場を無観客にすると決めました。
無観客と決めたことは、感染を広げないという意味ではいい判断でした。
感染対策を考えるなら、ワクチンを希望する人にいきわたるまでもう1年延期したほうがよかったと思います。ワクチンが広い世代にいきわたっていれば、今のような感染状況にはならなかったでしょう。
――この時点でワクチン2回接種を終えた人は全国で約15%にすぎませんでした。一方、感染力が強い変異ウイルスのデルタ株の猛威が懸念されていました。東京ではそれまで主流だった変異ウイルスのアルファ株から置き換わりが進み、2割程度になっていました。
いずれデルタに置き換わるのは海外の状況をみれば明らかでした。政府が想定していた以上に広がりやすかったといえます。医療態勢が逼迫(ひっぱく)することは予測できました。
デルタ株はアルファ株より感染力が強く、入院リスクも高いという報告もありました。
――実際、デルタ株が占める割合が増えていくとともに感染者数は急増、8月5日の東京都の新規感染者は5千人を超え、その後も4千人以上の日が続きました。
現実は、数理モデルで試算された数を超えるほどの勢いでした。モデルを超えることはあまり見たことがありませんが、普通じゃなかったということでしょう。
(後略)
(聞き手・瀬川茂子、矢田文)