「聖なる水」という意味のワイオタプ(Waiotapu)は、ロトルアの南に位置している有名な地熱地帯なのだが、今日はここを訪問する予定だ。
ロトルア周辺にはたくさん行くべきところがあるが、ここも訪問すべき有名な温泉地帯のひとつである。
http://www.geyserland.co.nz/
ワイオタプのレディノックス間欠泉(Lady Knox Geyser)は、毎日決まって10時15分になると、20メートルほどの温泉が吹き出る。受付で料金を支払うと、まず、この間欠泉を観なさいと言われる。間欠泉見学は自動車で5分ほど走ったところにある。
駐車場で一人の男性が、ここに停めろ、あそこに停めろと、来訪者に指示をしている。車をとめて、駐車場から歩いていくと、野外音楽堂のように段差のあるベンチに囲まれた場所に出た。向こう側に、海岸の砂山ほどの大きさで、雪かき後の雪の小山のようなものが見える。その先頭に穴があいている。どうやらそこから噴出すらしい。今は10時10分。めいめいがビデオカメラやデジタルカメラを構えて、間欠泉が噴出す瞬間を待っている。毎日決まって10時15分に噴出す間欠泉のために、それを見物しようとしている観光客を観察するのも、なんとも面白い。まるでロケット発射直前の見物人の集まりのようだ。
そろそろかなと思う時間になって、先ほど駐車場の管理人と思っていた男性が囲いの中に入ってきて、間欠泉が噴出すであろう出口に洗剤を入れて説明を始めた。すると泡とともに、間欠泉の出口からお湯がじゅるじゅると溢れ始めてくる。多少長めの説明が終わって彼が立ち去ると同時に、間欠泉がいきおいよく吹き上げ始めた。観客はどよめきながら、めいめいで写真を撮り始める。タイミングが悪ければ、あの駐車場のおじさんは大やけどをしたに違いない。まさに絶妙のタイミングだった。あとは、噴き出す間欠泉を背景に、各々が記念撮影。すでに見飽きたものはばらばらと駐車場へ向かって帰っていく。
このワイオタプの全体の地熱地帯のうち、約18キロ平方メートルの地域が旅行者用に見学が許可されているとのことだ。大変危険なので、ワイオタプでは、喫煙は厳禁である。このエリアで湧き上がった水はワイオタプ川を経て、ワイカト川に流れ込んでいるのだが、多数の熱泉から化学物質が流れ出ているため、ワイオタプ川には魚が住んでないという。例えは悪いが、ワイオタプは、まさに地球のおできとも言うべきところなのだ。
ワイオタプにはけったいなものが少なくない。
黒鉛(グラファイト)と天然の原油が混ざっているために「悪魔のインク壷」(Devil’s Ink Pots)と呼ばれる黒い泥沼。シャンパン池に隣接している、いろいろな色が観察できる「画家のパレット」(Artist’s Palette)。1886年のタラウェラ山の噴火で破壊されたピンクテラスとホワイトのテラス以来、ニュージーランドでは最大と言われている温泉華大地*1である「プライムローズテラス」(The Primerose Terrace)。この台地を左に見ながら、シャンパン池の湯煙のもうもうたる中を、ボードウォークの上を歩いていく。これはまさにワイオタプでしかできない体験だろう。
ワイオタプでは、こうした興味深いものを見物しながら、6.5キロほどの道のりを2時間半ほどかけて散策ができる。中でもシャンパン池は、直径65メートル、深さ62メートルで、表面の温度は74度だというから、入浴するにはかなり熱すぎるのだが、あたり一面を湯煙がたちこめ、視界はさえぎられるほどだ。
最後に見た池の水の色も不思議な色をしていて、緑色から黄色まで変化するという。この池には、「悪魔の浴槽」(Devil’s Bath)という名前がつけられていた。
一言でいえば、ワイオタプは要するに地獄谷なのだが、まさに「驚嘆すべき温泉地帯」(Thermal Wonderland)なのである。
*1:温泉華大地は魚のうろこのような文様になっている台地のこと。