ニュージーランドで日本の中古車を買う

 こうしてスバルのインプレッサを2台。日産のウィングロード、パルサーを2台。他にもいろいろと試乗して中古車の実際の比較をしたので、自動車の性能と価格帯について、私なりに感覚をつかむことができた。もちろん、トムの「講義」のおかげが大きいのだけれど。
 それで、すでに私はシルバーのインプレッサGBに決めていた。
 1800ccというエンジンの性能。車の取り回しが軽いこと。リスポンスの良さ。乗り心地の快適さ。内装の高級感。それでいて下品な派手さがなく、品位がある。あまり派手な色でスポーティーだと悪い輩に目立つけれど、シルバーなら目立たないんじゃないかというトムの説明も手伝っていた。インテリア内のステレオシステムなどももともとの標準装備で、目立たないのもいい。それでも、CDもカセットプレヤーもついているから、必要にして充分だ。ラゲッジルームも高級感があり、日常の買い物に使うには少し申し訳ないほどだ。
 それで、「まだ売れてなければいいのだけれど」とトムに言われながら、もう一度そのディーラーの所に行ってみると、幸運なことにまだ売れていなかった。
 もう一度試乗させてもらうこととし、今度はさらに遠出をしてみることにした。
 同じ道を走り、コーナリングの取り回しや、加速を確かめるが、申し分ない。やはりこいつに決めようということで、中古車に試乗したままスーパーで夕飯の買い物をして、トムの自宅に戻る。
 奥さんのジョニに、「こいつに決めるようだよ」と言った際の彼女の顔は、お金の点では少しもったいないねという顔つきをしているように私には思えたが、私は満足だった。
 ニュージーランドは、こうした点で、選択肢が多い。
 試乗できて選べるというのは、まことに理にかなったやり方だ。日産のパルサーが悪いわけではないのだけれど、バッテリーを取り替えないといけない状態のパルサーがあって、出発する際にも、途中ガソリンスタンドで再度始動する際にも、エンジンがかからないことがあった。もちろん、これはバッテリーを取り替えてくれるので、購入する際には問題はない。私が言いたいのは、ニュージーランド人はブランドで選ぶのではなく、実際に試乗してみて、車の状態をみて、選ぶといことだ。
 車名を出して恐縮だが、誤解してほしくないのは、ブランドで車の性能が決まるわけではない。中古車だから、あくまでも個々の車の状態が決定的である。そしてこうした選び方が大変理にかなっていると思うのだ。カーディーラーには、「他のディーラーも回ってみるから」と、トムは必ず言っていた。そしてあれこれのディーラーにまわって選ぶというのは、当たり前のことだ。そしてニュージーランドで、その選択肢は広い。
 車に関して私のように能力のない奴でもニュージーランドなら、なんとか能力がつきそうだ。いや能力をつけないと、ニュージーランドでは暮らしていけないだろう。