ワイカト大学、残念ながらケンブリッジ大学に惜敗

 午後2時ちょっと過ぎに、向こう岸で、なんと日本太鼓が鳴り響き、スピーカーから大音量のアナウンスが流れる。日本太鼓は、五・六人のパフォーマンスで、こういうときの太鼓は雰囲気を盛り上げるには最高だ。
 「この中で、ケンブリッジ大学を応援している人はいますか」とアナウンスが観客をあおる。当然、見物人からの反応はない。「それでは、この中で、ワイカト大学を応援している人はいますか」と、さらにアナウンスサーが続けると、市民はやんややんやの拍手喝采でこれに応える。「向こう岸の人はどうですか。どこを応援していますか」と、さらにあおると、「ワイカト大学!」と、向こう岸の見物人たちが声をそろえて応えた。「橋の上にいる人たちはどうですか」と、アナウンサーが次々と見物人の気持ちを刺激するものだから、否が応でもレースに対する期待が高まる。ハミルトン市が鳴り物を無料で配っているので、鳴り物を鳴らす市民が多く、とても賑やかになってきた。
 いよいよこの一大決戦が、2時過ぎにスタートとなった。4.5キロの距離を、大体17分ほどの時間で勝負がつくはずだ。
 艇は、ここから下流の4.5キロほど離れたところから出発しているし、ワイカト川が多少蛇行しているので、ここからはエイトの艇は全く見えない。だから見物人たちは、ブリッジ通りにある大画面で試合の様子を食い入るように見ている。
 どうやらワイカト大学(The University of Waikato)はスタートからのポジション取りに失敗したようで、すでに最初から艇一艇分ほどの差がつけられている。ようやく二艇が見え始めて、レースは最高に盛り上がる。
 レース最終盤は、追い詰めたものの、結局、この差を最後まで大きく響いて、残念ながらワイカト大学がケンブリッジ大学に惜敗した。
 艇はボートハウスに戻り、ボートハウス前でケンブリッジ大学勝利者インタビューが始まった。聞いていると、勝利者の代表はワイカト川に落とされる伝統的パフォーマンスがあるようだ。
 ハミルトンの市民は、ケンブリッジ大学に惜しみない拍手をしていた。実際は最高に悔しいのだろうけれど、負けても試合後はさっぱりするというところが、フェアプレイの精神である。ケンブリッジ大学の代表が川に突き落とされてから、惜敗したワイカト大学のインタビューがおこなわれた。
 ワイカト大学が負けたのは残念だったけれど、素晴らしいワイカト川で、こうした行事ができるのは、なんともハミルトン(キリキリロア)らしくていい。実に楽しい半日だった。ワイカト大学(The University of Waikato)が負けたので、パブで一杯ひっかけることもせず、私は歩いて家まで帰った。
 食事の支度をして、いつものように1チャンネルで夕方6時のニュースを観ていると、ワイカト川の大レースの模様が報道された。
 ラグビーとボート、イギリスの伝統は、どうやらここニュージーランドにも、脈々とあるらしい。