アジア・太平洋文化圏の中の日本

 日曜日の朝、いつものように1チャンネルを見ていると、「太平洋の人々」という番組をやっている。
 たしかパラオからの映像だと思うのだけれど、太平洋文化祭りみたいなものをやっていて、その祭りについて報道をしていた。太平洋に散らばる諸島は、太平洋文化圏として、コトバも近いし食べ物や踊りも近いということで、自己ルーツの発見というのがあるのだろう。みんな楽しそうに祭りに参加している。
 この中で、小笠原から来た日本人のグループも太平洋諸島の人々とまじって踊っていた。なんでも、小笠原に伝わる伝統的な踊りは太平洋諸島から伝わってきたものなのだと、その日本人参加者がイギリス語で説明していた。  
 なるほどね。やはり太平洋を中心とする文化圏があるのが当たり前で、これに注目しない方がどうかしているという私の印象は、見当違いでもなさそうだ。
 この「太平洋の人々」という番組に続いて、「アジアダウンアンダー」が放送され、この日は陶芸を教える日本人男性と茶の湯を教える日本人女性が登場した。
 「太平洋の人々」といい、「アジアダウンアンダー」といい、ニュージーランドの報道姿勢がわかるというものだ。簡単にいえば、ニュージーランドは、太平洋諸島やアジアを重視しているのだ。
 この「アジアダウンアンダー」という番組で、いわゆる茶の湯が完成されたのは、安土桃山や豊臣秀吉の頃なのだけれど、日本人はお茶を飲むだけでなく、お手元というのか、茶碗を愛でてほめるというような解説がされていた。これは、まぁ、私でも知っている。ティーセレモニーとして、お茶も何度か飲んだことがある。ところで陶芸の技術は朝鮮から伝わってきたのだけれど、テレビの説明では、この朝鮮から来た朝鮮系職人のことを「囚人」「捕虜」という意味のprisonerというイギリス語を使っていた。
 なるほどね。やはり事実はきちんと押さえないといけませんね。
 私はこのプリズナーというコトバから、豊臣秀吉の評価も含めて、日朝関係の視点で日本の歴史を概観しないといけないと再認識させられた気分になったのだけれど、この「アジアダウンアンダー」は、単なるお茶の間生活番組である。ジャーナリスティックな教養番組ではけっしてない。それが証拠に今日もビーフアンドエッグドンブリの作り方指導の後に、陶芸でもしてみませんかと紹介していたくらいだ。
 アジアの中の日本として、私たちは他のアジア諸国ともっと仲良くしていかないといけないのに、なんで報道の中で、アジアを事実としても押さえる努力を日本はしようとしないのか。
 これではアジアを相手にしていないと言われても仕方ないと、心配するのは私だけだろうか。日本にいるよりニュージーランドにいる方が、よほどアジアや太平洋のことがわかると思うのは、単に私の気のせいなのだろうか。それとも、やはり日本の報道姿勢の質が低いのか。
 隣国についても、ごく普通のことが普通に報道されないと、日本人は、井の中の蛙であり続けるしかないのだろう。