「異国での毎日も大分慣れたところさ」

この車、500ドルで売ります

 奥田民生のいたユニコーンというバンドは、「ケダモノの嵐」など、素晴らしいアルバムを残しているのだけれど、「ヒゲとボイン」もいいアルバムだ。
 このアルバムの中の「開店休業」「家」「Oh, what a beautiful morning」「ヒゲとボイン」なども好きなのだけれど、「日本へ行くの巻き」という唄がある。


    異国での毎日も
    大分慣れたところさ


 この唄は、どうやら日本人でない者が日本にやってきて日本を観察しているという設定になっているのだけれど、ちょうど今の私の気分にぴったりだ。
 日本の「働き過ぎ」や「過保護」「行き過ぎた潔癖症」「一点豪華主義的な清潔好き」、それに「義理と人情」をちょっぴりからかっているような内容なのだけれど、日本を表現するのに、「服を着ている犬」と「いつもピカピカの車」という道具立てはなかなか秀逸だ。


    働くことが好きな
    君みたいなタイプは
    この国に向いているのかもね


    ニッポンってところはなかなか素敵
    宇宙旅行をしてる気分だよ
    イヌがほら、服を着てる


 日本人にとっては、ありきたりの日常風景でも、日本以外で育った人間にとっては、「宇宙旅行」をしているような気分になるに違いない。東京は六本木あたりで、寒い季節に、犬に服を着せて散歩させているのを見たら、「へぇ、日本じゃ、犬に服を着せるんだ(過保護なんだね)」と、外国人に観察されてしまうことだろう。


    車はいつもピカピカにしとけよ
    義理と人情が一番大切


 いま私が滞在しているニュージーランドには、日本から輸入された中古車だらけなのだが、ニュージーランドでは、ピカピカの車というのはめったに見かけない。ニュージーランド人が日本に行ったら、「さすがハイテク日本。車もピカピカだ」と観察されてしまうことだろう。
 ニュージーランド人は無駄にカッコをつけるということはしないようだから、オンボロ車でも乗りつぶすまで使い切るという徹底した実用主義。さらには小雨が降っていても、裸足の女学生が大学構内を歩いているニュージーランドは、日本人からみたらかなり野性的。まさに「宇宙旅行」のようなものであるに違いない。
 ニュージーランドのめずらしい風景が私にとっても徐々に新鮮さを失い、単なるありきたりの生活のひとコマとして、日常の中に埋没してきているのかもしれない。
 さて、今日は土曜日。おまけに雨も降っている。大学の図書館はさぞ閑散としていることだろう。土曜日は10時開館で、夕方6時に閉館になる。応用言語学もCALLも課題提出日が迫っているので、非ニュージーランド的に、10時から夕方の5時ごろまで私は図書館で勉強だ。