「君に会って何て言う?」


    うれしいですと言う
    あたりまえだろ
    ほんとなんだ

          (奥田民生


 ハミルトンガーデンについたら、今日は駐車場に車がいっぱい。
 なんと、いつもは使っていないきれいに敷き詰めた芝生まで入口をあけてたくさん車がとまっている。芝生の上に車をとめるのはなんだか気が引けるなと思って、いつものように砂利道の駐車場に入って、車をゆっくり動かしていると、見知らぬ女性が俺に向かって挨拶をする。
 何かと思ったら、「車をとめたいんでしょ、私たちの車が出るから」と、親切だ。
 うん、いいね、人間的でと思いながら、車をとめて、各国のガーデンの入口に近づくと、バグパイプのいい音がする。
 今日は、アイリッシュスコティッシュの野外コンサートでもあるのかなと音のする方へ近づいていくと、あのスカートのようなスコットランド(Scotland)の民族衣装であるキルトをはいた男性パイパーがいて、その後に、ウェディングドレスを着た女性が歩いている。みんなも後をついていっているので、「これは、スコットランド系の結婚式ですか」と私が聞くと、「そうだ」と言う。
 スコットランド系の結婚式を見るのは初めてだ。
 スコットランドのパイプはいい。なんていうか、堂々としていて、心打たれるものがある。ソロ演奏なのに朗々と響き、この音を聞きつけて人が集まってくるだけの音量がある。
 イタリアのガーデンの方に歩いていくので、ついていくと、いつもは人がほとんどいないイタリアルネッサンス式ガーデンの舞台に、こちらも民族衣装であるタータンチェックのキルトをはいた婿さんがいて、付添い人が数名並んでいる。そこへパイパー(piper)に引き連れられた花嫁が近づいていく。
 新婦が舞台の上にあがったところで、舞台の上では、神父さんではなくて、女性のとりはからいによって、誓いの儀式にうつる。
 まず、新婦が誓う。誓いのセリフはアンチョコがあるので、新婦はそれを読み上げているだけだ。次に新郎が誓いのコトバを述べる。これも、見せられている紙を読み上げるだけ。そして指輪の交換があって、キスにうつると、集まっている観衆や見物人が拍手をした。
 そして、パイパーが、また音楽を奏でだす。
 まさに、これは奥田民生の「君に会って何と言う」「うれしいですという」「あたりまえだろ」「ほんとなんだ」の世界だ。
 ハミルトンガーデンでの結婚式とは、なかなかいい。ハミルトンガーデンは市営で、入場料はとらない。だから、当然この結婚式も無料だろう。
 このあとで、緑が美しいパークのあちこちで、着飾った参加者が写真を撮ったりしてたし、ローズガーデンの方でも、この新郎・新婦を見かけたから、あちこちゆったりとみんなで話して歩いているだけの結婚式なんだろう。
 幸せな人たちを見ていると、こっちまで嬉しくなる。見物人たちもみんな楽しそうだ。


    たのしい時何ていう?
    たのしいですと言う
    それでいいだろ
    言葉なんか


 私としても、実に楽しいひと時だった。


 いま私が滞在しているニュージーランドでは、奥田民生の「スカイウォーカー」にふさわしい青空が今日も広がっている。