久しぶりにスパイクリー監督の映画「マルコムX」を観た

映画マルコムX

 久しぶりにスパイクリー監督の映画「マルコムX [DVD]」(1992年)を観た。
 ローザパークスさんのバスボイコット運動からマーチンルーサーキングジュニア牧師の公民権運動、ワシントン大行進の話は、今や英語教育では定番で英語教科書でもよく公民権運動を扱うのだが、いまの高校一年生は、アメリカ合州国公民権運動の背景的知識を知らない。MLKがテーマであるU2の"Pride"という歌やローザパークスがテーマであるネイビルブラザーズの"Sister Rosa"などを紹介しようと思っても、公民権運動に対する背景的知識がないからピンと来ない。
 仕方がないので映画を見せようと思った。
 スパイクリー監督、デンゼルワシントン主演の「マルコムX [DVD]」の資料は、アレックスヘイリーによる聞き書きの自伝である。通読はできなかったけれど、これを私は高校生の頃に買って読もうとしたことがある。
 黒人による意識革命が起こる前は、白人的価値観が主流である社会において、多くの黒人たちが白人のようになろうとして、白人的な髪型、白人のようなファッションスタイルに影響を受ける中、マルコムリトルは貧困から麻薬に手を出し犯罪に手を貸して牢屋に入れられてしまう。数ある罪状の中でも人種を越えての性的関係が大きな罪状であるという点が想像を越えるだろう。
 その牢屋の中で、黒人意識に目覚めよという意識の高いブラックムスリムから啓蒙され、black, whiteの辞書の定義をめぐってマルコムリトルは自分の頭で考え始める。
 辞書の定義では、たしかにblackのイメージは悪く、一方でwhiteのイメージは良い。ブラックパワーの高揚前期、Webster辞書は嘘だと言あげされた頃の話だ。
 黒は汚れているのか。本当にそうなのか。これがBlack is Beautiful.という意味論的闘いに結びつく。自分という存在を根底から考え始めたマルコムリトルは、まさに生まれ変わって牢屋の中で学び始めるのだ。
 マルコムXの誕生である。
 映画「マルコムX [DVD]」を久しぶりに見たが、これは公民権運動*1を学ぶには格好の教材のひとつだが、あまりに壮絶すぎて、いまの高校生には太刀打ちできないかもしれない。また、3時間21分もの時間は高校生に鑑賞させるには、ちょっと長すぎる。
 高校生に公民権運動を知ってもらうための映画なら、ウーピーゴールドバーグ主演の「ロング ウォーク ホーム [VHS]」くらいがちょうどいいかもしれない。

*1:マルコムXは「公民権運動」を乗り越えて「人権」の闘いにすべきであると主張していたから、実はマルコムXを「公民権運動」の教材にすべきという指摘は正確とは言えない。