「ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸」を読んだ

「ここが家だ」

 ベン・シャーンの絵、アーサー・ビナード氏による構成・文の「ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸 [ ベン・シャーン ]」を入手して読んだ。
 この本は、もちろん第五福竜丸の水爆による被災事件を扱っている。
 ベン・シャーンの絵が印象的な絵本だが、とくに私の眼を引いたのは、次の記述だ。

 空からふった あの灰には 生きものの からだを しずかに こわしていく 放射能が たっぷりと はいっていた。 それでも 無線で 「たすけてくれ」と たのむと なにを されるか わからない。 もっと ひどいめに あわされてしまう かもしれないのだ。 水爆という 見てはいけなかった 秘密を 見たのだから。


 また、久保山さんの有名な言葉。

 9月23日 久保山さんの 心臓は とまった。「原水爆の 被害者は わたしを 最後に してほしい」といって かれは なくなった。


 そして、次の一文だ。

 久保山さんのことを わすれない」と ひとびとは いった。 けれど わすれるのを じっと まっている ひとたちもいる。


 あとがきのような「石に刻む線」というアーサー・ビナード氏の文章の中で、サッコとヴァンゼッティ事件について触れていたことも印象的だった。
 サッコとヴァンゼッティ事件も、「わすれるのを じっと まっている ひとたちもいる」ことのひとつなのだろう。