authenticなものは唄から学んでいた

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Journey Through the Past

 高校に入学してからは、Crosby, Stills, Nash and Young、とりわけニールヤング(Neil Young)が私にとってのアイドルだった。だからauthenticなものといえば、私はNeil Youngから学んだといってよい。
 ところで、あの頃は、資料といえばレコードしかなかった。レコードのジャケット内に収録されていたニールヤング(Neil Young)直筆の歌詞カードも、それまで英語の直筆など見たことがなかった私にとっては、まさにそれ自体がauthenticな資料であった。また、カナダは英語とフランス語が通じると一般常識で聞いていたけれど、その具体的なサンプルがNeil Youngだった。
 教室英語は、authenticという意味では、あまり説得力がなかったけれど、Neil YoungがHelplessと歌えば、そういうことなのかと体感した。Journey Through the Pastで歌われるFebruaryの発音や、Helplessで歌われるstarsの発音も、こうした基礎語彙の発音はもちろん中学校で習ったけれど、実際のところはNeil Youngのボーカルからauthenticなものとして体感した。カナダ訛りがあるのかどうかもわからなかったけれど、Neil Youngの韻を踏んだ歌詞で、英語の音を学んだ。ある意味、Neil Youngは私にとっての英語のお師匠さんだった。
 よく理解できたわけではないけれど、ライブレコードのMCなどに必死になって耳を傾けた。Neil Youngの二枚組レコードであったJourney Through the Pastは、彼が製作した映画のサウンドトラックということで発売されたのだが、その内容は継ぎはぎ的で統一感がなく、選曲の内容も二番煎じということでこっぴどく酷評されていたが、authenticという意味で私には面白かったし興味深かった。大げさにいえば、ニールヤング体験は、私にとってのアメリカ合州国体験でもあった*1。思うに、そもそも私は英語のauthenticなものを求めて洋楽を聴くという普通とは違った見方・考え方をしていたのであった。のちにRandy Newmanに興味をもつのも同じ視点からのことだ*2
 他に、ライナーノートやミュージックマガジンなどの雑誌もあったけれど、生意気盛りの私は、ライターがどれほどの資料にあたって書いているのか疑問があり、信頼できる確実な資料とは思っていなかった。

*1:カナダ出身のNeil Youngを通じての体験が、合州国追体験というのもおかしな話だが、カナダ出身のNeil Youngがカナダを去ってカリフォルニアに住み、いわば合州国体験をしたということについては間違いはないはずだ。

*2:それにしても、Neil Youngはカナダ人、Randy Newmanはユダヤアメリカ人と、いわば主流アメリカ人の視点でないところが、興味深い。異邦人的視点をもった観察者のつくる唄の方がひねくれていて面白いということなのか。