黒澤明監督の「素晴らしき日曜日」を観た

素晴らしき日曜日

 黒澤明監督の「素晴らしき日曜日 [DVD]」を観た。
 1947年7月に公開されたというこの映画の中で、戦後の若いカップルの苛立ちがよく表現されていた。
 彼らは、まず結婚したくても金がなくて結婚できない。デートするにもお金がないから、モデルハウスの見学をする。見学だけなら、無料だからだ。新築の家はもちろん買えないのだが、その新築の家も値段が高い割にたいした家でないと男が文句を言う。次に、日当たりの悪いアパートを借りることもできない、動物園に行っても、戦後でたいした動物もいない。生演奏の音楽のチケットを買おうとすると、ダフ屋によってチケットを買い占められ、チケットの値段も吊り上げられてチケットも買えなくなってしまう。おまけに雨が降ってきて、友人と同居している雨漏り尾するアパートに帰ってくる。その小さなアパートの一室で、男と女は口論となり喧嘩をしてしまう。雨が止み、仲直りをして、外に出ると、カフェのコーヒーのミルクがべらぼうに高い。そのカフェに男はコートを置いていくことにと、さんざんな日曜日になってしまう。
 映画評論家の佐藤忠男氏の書かれた「黒澤明解題」によれば、この「素晴らしき日曜日 [DVD]」は、第二次ストライキと呼ばれる激しい労働争議があった次の年につくられたそうで、組合が中心になって立てた企画のひとつだったようだ。
 黒澤明監督の映画の中では、大活劇もないから、地味な作品と言ってよいだろうが、私はそれなりに楽しめた。
 それは、第一に、戦後の若いカップルがどういう状況下に置かれていたのか、よくわかる映画だからだ。まさに、それは映画に登場してくるカップルのようだったのだろう。その点が妙にリアリティがあって面白かったという点と、第二には、日本の男と女のカップル、とくに話のやりとりの典型をよく表現していたという点だ。
 そいういう意味で、現代の若いカップルにも是非見てもらいたい作品のひとつだ。ニート、フリーター、ネットカフェ難民と言われる現在の若者にも通じるものがあるはずと思う。