黒澤明監督の「わが青春に悔なし」を観た

わが青春に悔なし

 最近の日本の政治状況を見るにつけ、日本人というのはこんなに簡単に歴史的反省を忘れる情けない民族だったのかと暗澹たる気持ちになることが多く気持ちが落ち込むことが少なくない。それでも、そんなにひどい民族ではなかったのではないかという気持ちで、現時点ではなく、戦後の時代精神(zeitgeist)を土台にしてつくられた日本映画を見ながら改めてそのことを考えてみようと思い、これまで残念ながら機会がなくて未見の日本映画を最近努めて見るようにしているのだが、黒澤明監督の「わが青春に悔なし [DVD]」は、まさに日本人が制作しなければならなかった1本であり、その意味で古典であると思った。
 今回はじめて私は「わが青春に悔なし [DVD]」を観たが、これは全ての日本人に見て欲しい歴史的作品だ。全編を通じているテーマは、いかに生きるべきかということであり、とりわけ女性の生き方を描いていると言ってよい*1。それが戦前・戦後という時代状況を貫いて表現されている。原節子が、女性の行き方を見事に演じきっていた。とりわけ、村人たちの嫌がらせに負けず生き抜こうとする田植えの場面は圧巻だ。
 1946年10月、東宝、公開作品。

*1:黒澤明監督によれば、「戦後の第一作『わが青春に悔なし』は、その自我の問題をテーマにしている」と言っている。