山本薩夫監督の「戦争と人間」三部作を見た

戦争と人間第一部

 1970年から1973年にかけて製作された五味川純平原作、山本薩夫監督による映画「人間の條件DVD-BOX」三部作を私は、おそらくリアルタイムで観ているが、今回あらためて一挙に三部作を見てみた。

 初めて見たとき、とても印象深く思ったのだが、あの戦争がいかなる戦争であったのか、眼が開かれる思いで見たように思う。その点は今回も再確認できたのだが、今回この大作を一挙に見ての感想は、映画表現として荒さも目についたのも正直な感想だ。
 俳優では新劇陣からも多く出演しているが、日活オールキャストともいうべき豪華キャスト、人気俳優ぞろいである*1
 男性陣では、滝沢修芦田伸介高橋英樹北大路欣也山本学山本圭。女性陣では、浅丘ルリ子栗原小巻佐久間良子吉永小百合。第三部の山本圭吉永小百合の恋愛関係などの見せ場はあるけれど、豪華キャストや個々の恋愛関係に依拠しすぎたせいか、戦争に関して仔細に描ききれていない印象を持った。細かなことでいえば、列車爆破の場面などが模型であることや、歴史を字幕説明でつないでいく点も気になった。
 それでも、この大作三部作の歴史的意義を過小評価することはできない。とりわけ、あの戦争がいかなる戦争であったのか、概括できる点については、評価して余りある。

 
 

*1:「戦争と人間」という映画は、出演者が人気俳優ぞろいであり、男女の恋愛関係がテーマであるという点からすると、娯楽作品的な性格があると言えるのだろう。シリアスな戦争映画と見てはいけないのかもしれない。