「長崎原爆、撮る・伝える 井上ひさしさんの遺志継ぐ映画」

 以下、朝日新聞デジタル版(2015年7月12日05時00分)より。

 長崎原爆をテーマにした映画「母と暮せば」の制作が進んでいる。劇作家の故井上ひさしさんの遺志を、山田洋次監督(83)が継いだ作品で、女優吉永小百合さん(70)が主役をつとめる。戦後70年。戦争の現実と悲惨さ、平和の尊さを映画を通して訴える。

 以下、山田洋次監督の談話。

 山田洋次監督「僕の生涯で一番大切な作品にしようと思う」


 戦争の記憶が急速に遠ざかりつつあります。僕たちの国が世界で唯一原爆の被害を受けたという事実を繰り返し語り継ぐことの、どこが間違っているのでしょうか。
 原子爆弾という大量殺人兵器の発明が科学技術の進歩の成果であるとしたら、人間はどうしてそんなに愚かなのだろう、と思わないわけにはいきません。
 「母と暮らせば」の準備のために何度もナガサキを訪れました。その昔、井上ひさしさんが「父と暮らせば」の調査でヒロシマを訪れ、被爆者の体験記を一字一字ペンで書き写したという話を聞いて、僕も万年筆でノートに何枚も書き写しました。そうしなければ被曝者に失礼にあたると、井上さんと同じように考えたからです。
 これは僕の83作目の映画です。生涯で一番大切な作品にしよう。そんな風に思っています。(談)