八幡平をなめてはいけない

 アスピーテラインを車で上っていくと、急に霧が発生してきた。みるみる間に視界が悪くなり、前方も後方もよく見えない。人間は、視界からかなりの情報を得ているので、これでは判断ができず、危険だ。恐る恐る進むが、この天気ではトレッキングも無理だ。八幡平をなめてはいけない。どこかで様子を見たいとも思うが、霧は一向に晴れてくれない。様子を見るにも、ガソリンメーターは半分を指しているのでまだ大丈夫と思うが、ガソリン切れにでもなればレスキューが必要になってしまうかもしれないと不安になる。状況が悪化すると、悪循環で気分も落ちてくるからいけない。
 あとでキャンプ場の管理者に聞いたところ、7月から8月にかけての八幡平は、前日に雨が降ると霧が発生することが多いという。麓が晴れていても、大自然の八幡平は、吸った水が、下から水蒸気化するのだろう。八幡平をなめてはいけない。この天気じゃトレッキングどころではないので、戻ることにする。パーキングで車を切り返して、いま来た道を戻る。戻るのもゆっくりだ。
 ふけの湯温泉のパーキングに車が2台止まっている。そこに車を止めて、他のドライバーに話しかけてみた。地元の人だったので、一番近いガソリン給油地を聞くと鹿角市の方にたくさんあるという。この霧では、明日もダメかもしれないという。いずれにしても今日のところは八幡平トレッキングはあきらめて、ガソリン給油でもしておくことにする。
 アスピアキャンプ場に戻ると、少し雨も降ってきた。けれど、これくらいの雨なら、小雨のキャンプもまた楽しである。
 夕食の準備を終えて、夕食。といってもそれほどの準備ではない。スペインのスパークリングワインのカヴァで乾杯し、ブルゴーニュの白ワイン、2008年もののSaint-Aubin 1er Cruをあける。
 愛用のプリマストースターを使ってシングルバーナーでウィンナソーセージなど焼く。キャンプではこうしたものは焼くだけでうまい。焼くという作業はなんとも偉大だ。玉川温泉仕入れたにんにくも焼いてみる。あまり好物ではないが、玉川温泉仕入れたきりたんぽも茹でて焼く。とうもろこしも焼けば、香ばしさが増す。
 夜の帳には、キャンドルを3つおごった。やはりキャンプは楽しい。