「安倍首相会見の要旨 安保法制法案の閣議決定を受けて」

 以下、朝日新聞(デジタル版2015年5月14日21時58分)から。

 安全保障法制の関連法案の閣議決定を受け、安倍晋三首相が14日に行った記者会見の要旨は次の通り。


【冒頭発言】


 不戦の誓いを守り続け、国民の命と平和な暮らしを守り抜く決意のもと、平和安全法制を閣議決定した。もはや一国のみで自国の安全を守ることはできない。

 厳しい現実から目を背けることはできない。積極的な平和外交と同時に、万が一への備えも怠ってはならず、日米同盟の強化に努めてきた。(先月の)米国訪問によって、日米の絆はかつてなく強くなった。

 日本近海で米軍が攻撃されるといった状況では私たちにも危険が及びかねない。まさに私たち自身の危機だ。その危機を排除するために他に適当な手段がない。なおかつ、必要最小限の範囲を超えてはならない。この三つの要件による厳格な歯止めを法律案の中に定めた。国会の承認も必要となる。極めて限定的に集団的自衛権を行使できることにした。

 米国の戦争に巻き込まれると不安をお持ちの方に申し上げる。絶対にありえない。日本が武力を行使するのは、日本国民を守るためだ。「戦争法案」といった無責任なレッテル貼りは誤りだ。自衛隊がかつての湾岸戦争イラク戦争での戦闘に参加するようなことは今後とも決してない。

 PKO協力法を改正し、新たに国際平和支援法を整備する。我が国の平和と安全に資する活動を行う米軍などの外国の軍隊を後方支援するための法改正も行う。いずれの活動でも武力行使は決してしない。

 行動には批判が伴う。安保条約改定時も、PKO協力法制定時も、「戦争にまきこまれる」との批判が噴出した。しかし、まったく的外れだったことは歴史が証明している。


 【米議会演説で法案の成立時期を明言したと批判されていることへの対応】


 「この夏までに」と言った。2012年の総選挙以来、「平和安全法制」を公約に掲げており、今まで申し上げてきたことを演説で述べた。必要な法整備だと審議を通じて説明したい。

 【自衛隊の活動範囲】

 紛争国から逃れてくる日本人を運ぶ米艦が攻撃を受けても、その艦艇を日本は守れない。これを変える。PKO活動を自衛隊がしていて、近くの日本人NGO(非政府組織)から救出を要請された場合、救出できる。ISIL(「イスラム国」の別称)の(掃討作戦の)後方支援をすることはない。


 【自衛隊員の危険】


 今までも自衛隊は危険な任務を担っており、発足以来1800人が殉職した。殉職者が全く出ない状況を実現したいし、一人でも少ない方がいいが、災害においても危険が伴う。隊員の安全確保は当然で、リスク軽減は今後も変わらない。


 【法整備の必要性】


 日米同盟にすきがあると思われると、攻撃を受ける危険性は増す。法整備で、紛争に巻き込まれたり、日本が攻撃を受けたり、日本人の命が危うくなったりするリスクは減少する。


 【防衛費への影響】


 一昨年の中期防衛力整備計画で5カ年の防衛費総額を明示した。法制による、防衛費の増減はない。