「ノーベル平和賞予想、9条・反核運動を有力視 9日発表」

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 朝日新聞デジタル版(2015年10月5日00時08分)から。
 

 今年のノーベル平和賞が9日にノルウェーの首都オスロで発表される。第2次世界大戦の終結と原爆投下から70年の節目となる今年は、日本の平和運動も受賞が有力視されている。日本からの受賞となれば、非核三原則を唱えた故佐藤栄作元首相の1974年以来、41年ぶりとなる。

 今年の平和賞は、世界中から推薦された205人、68団体の計273候補の中から選ばれる。

 受賞予測を毎年発表している民間研究機関「オスロ国際平和研究所」(PRIO)のハープウィケン所長(53)は今年、憲法9条の改正に反対する日本の「九条の会」を五つの有力候補の4番目に挙げた。同氏は昨年のマララ・ユスフザイさん(18)の受賞を的中させた実績がある。朝日新聞の取材に対し、安倍政権の憲法解釈の変更や安保関連法制定を念頭に、「国家間の緊張が高まり困難が増す東アジアで、9条の不侵略や平和主義の理念が再認識されるべきだ」と述べた。

 今年はまた、広島・長崎の被爆者でつくる「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)の受賞の可能性にも注目が集まる。原爆投下30年の75年から05年まで過去4回、10年ごとの「5」がつく年は核軍縮・廃絶に取り組む人物や団体が受賞してきたからだ。

 ノーベル委員会には48年、長年授与が叫ばれた「インド独立の父」ガンジーが暗殺されたために「該当者なし」となった苦い経験がある。九条の会日本被団協の推薦者の一人、英ブラッドフォード大学のピーター・バンデンダンゲン博士(67)は「被爆者は平均年齢が80歳を超えている。50年代から活発な平和運動を続けてきた被爆1世が存命のうちに授与しなければ、委員会は後悔するだろう」と話した。

 このほか核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)や、日本被団協代表委員の谷口稜曄(すみてる)さん(86)とカナダ在住のサーロー節子さん(83)の被爆者2人も推薦されている。

 核関連以外で受賞が有力視されるのは、難民救済に取り組む国連難民高等弁務官事務所UNHCR)や難民受け入れに前向きなドイツのメルケル首相だ。

 UNHCRによると、世界の難民と国内避難民は昨年末に約6千万人に達し、過去最多を更新。紛争下のシリアなどを逃れ、欧州連合(EU)に難民が押し寄せ、国際社会の対応に関心が高まっている。UNHCRが受賞すれば、54年と81年に続く3度目となる。

 委員会の顔ぶれの変化が選考にどう影響するかも注目される。今年はオバマ米大統領(09年)やEU(12年)など論議を呼ぶ選定を率いたヤーグラン元首相が一般の委員に退き、副委員長だったカーシ・クルマン・フィーベ氏が新委員長に就任。委員会を支える事務局長兼ノーベル研究所長も、冷戦と核軍縮に詳しいオスロ大学のオラフ・ニュルスタッド教授に交代した。

 こうした変化は、近年、人権救済や環境保護など幅広い分野の功績をたたえてきた平和賞を「国家間の友愛」や「軍備の削減・廃止」への貢献者に授与するとしたノーベルの遺志に、より忠実な選定に引き戻す可能性もある。

 受賞者は日本時間の9日午後6時に発表される。(ロンドン=渡辺志帆)

■1970年代以降の「5」がつく年のノーベル平和賞受賞者

1975年 旧ソ連の核物理学者で人権活動家アンドレイ・サハロフ

1985年 核戦争防止国際医師会議

1995年 核廃絶をめざす科学者らでつくるパグウォッシュ会議

      会議創設メンバーの物理学者ジョセフ・ロートブラット氏

2005年 国際原子力機関IAEA)とエルバラダイ事務局長(当時)