『「グローバル人材育成」の英語教育を問う』を面白く読んだ

グローバル人材育成の英語教育を問う

 斎藤兆史・鳥飼玖美子・大津由紀雄・江利川春雄・野村昌司「グローバル人材育成」の英語教育を問う (ひつじ英語教育ブックレット)を面白く読んだ。

 どのような科目も自らの意欲がなければ学びえませんが、特に言語は自分で学ぼうとしない限り決して習得できません。加えて、言語というのは生涯を通して学ぶべきであり、学校を卒業した後も自らの力で継続して学ぶことを可能にする自律性が不可欠です(鳥飼玖美子)。

 

 「グローバル市民」の条件には、四つあると考えています。

 (1)自らの「アイデンティティ」をしっかり持っていること。自分が何者であるかを知っていることは、自律性の涵養への第一歩であり、他者理解の出発点です。
 (2)「異質性に寛容」であること。
 自分とは違う他者を理解することは難しいのですが、少なくとも違うということを認め、折り合いをつけようとする寛容な気持ちが欠かせません。これがあって、はじめて異文化に心を開き理解しようとする姿勢が生まれます。
 (3)ことばを通して他者と関係構築ができること。
 今の日本では「コミュニケーション能力」という用語は聞き飽きた感がありますが、私がグローバル市民にとって必要だと考えている「コミュニケーション能力」は、言葉を通して人との「関係を構築する」ことができる能力を指しています。
 (4)「教養人」であり、かつ「専門性」を持っていること。
 専門性はあっても教養はない、教養はあっても専門がないということではなく、教養を持ちつつ専門も持っている、つまり、得意なものを一つ持っているということです。「ここは私にお任せください。私は、これで世界の人びとの役に立ちます」という「何か」を持つということです。
 こういう四つの要件を満たすためには教養教育が必須です。
 そして、コミュニケーション能力には、母語と同時に外国語能力も含まれます。外国語能力は、英語能力だけではありません。現代社会はグローバル化しているだけでなく、グローバル社会の実態は多様性であり、多言語であり多文化である…。(鳥飼玖美子)