以下、朝日新聞デジタル版(2017年6月30日05時00分)から。
学校法人「加計(かけ)学園」をめぐり、安倍晋三首相側近の下村博文・自民党幹事長代行の献金問題が浮上した。下村氏のほか稲田朋美防衛相、萩生田(はぎうだ)光一官房副長官の首相3側近が次々と批判や疑念の的となる異例の事態。東京都議選の投開票が迫る中、首相の足元の揺らぎが政権運営に暗い影を落としている。
■思想信条近い3氏
「下村議員がしっかりとご自身で説明される」。菅義偉官房長官は29日の定例会見で、この日発売の週刊文春が報じた下村氏の疑惑についてこう語った。首相官邸の幹部は「何も問題はない。下村氏本人が説明して、終わりだろう」。下村氏が政府の役職に就いていないことから、問題からは距離を置いて沈静化を待つ方針だ。
27日には稲田防衛相が都議選の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と述べ、その後に発言を撤回。自衛隊の政治的中立性を侵しかねない発言だったとして批判を浴びている。さらに、首相の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設をめぐる問題では、萩生田官房副長官の「発言」を記した文部科学省の文書が見つかり、野党が追及中だ。
3氏はいずれも首相の側近で、首相出身派閥の自民党細田派に所属。思想信条が首相に近く保守的なことでも知られている。
下村氏は第1次安倍内閣で官房副長官、第2次内閣では文部科学相を歴任。主に教育分野で安倍カラーを発揮することに尽力した。新国立競技場の旧建設計画が白紙撤回となった問題を受けて閣外に去ると、今度は自民党総裁特別補佐として首相を支えた。
稲田氏は首相が「保守派のスター」などと評価。党幹事長代理だった首相の説得で、弁護士から政治家に転じた「安倍印」の代表格だ。萩生田氏も北朝鮮による日本人拉致問題を通じて首相との交流を深めた。
政権中枢は、3氏をめぐる疑惑や批判が相次ぐことで、重用した首相の任命責任や政治責任が問われる事態を懸念する。一方で、3氏はいずれも首相にとって気心が知れた「身内」のような存在であり、突き放すかのような対応が取れないのも実情だ。
「稲田氏の発言は法令違反にあたらないのか」。菅氏は29日の会見で記者団から繰り返し問われたが、「誤解を招きかねない発言だった」と述べるばかりで見解を示さなかった。自民の二階俊博幹事長は都議選の遊説先で、加計学園問題の影響を問われ「逆風でも順風でもない」と論評を避けた。首相は「指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」と語ったが、一連の問題から身をかわす政権幹部の姿ばかりが目立つ。
報道各社の世論調査で内閣支持率が下落するなか、首相の対応には与党内でも不満がくすぶる。閣僚経験者は7月2日の都議選投票日を前に、第1次内閣時代の2007年に閣僚らの失言や不祥事が相次ぎ、夏の参院選で惨敗した当時といまを重ねる。「いやな感じだ。どこかで見た政治風景になってきた」(岩尾真宏)